第97話
その後ルーナと合流し、俺、ミニョン、ルーナはとりあえず学院のルチルに声を掛けに行く事にした。
「・・・」
「・・・」
「・・・」
う〜ん、先程の事もあるがミニョンは無言で、然もルーナとも昨日の夜微妙な感じで別れてしまったのだ。
「あれ若頭、お出かけですかい?」
「ああ、バドーさん」
俺達が玄関へと廊下を進んでいると、暴走族の様な出で立ちのバドーと出くわした。
「ええ、アームさんからの依頼で魔物退治です」
「ああ、魔空間の濃度が上がってやすからね」
「ええ、そうみたいです」
さも当然の様に状況を理解しているバドー。
ケンイチ氏の部下らしいので、こういう事態にも慣れてるのかと思い聞いてみると、やはり紛争があるとその後に魔物がダンジョンから野外に出て来るのは一般的な事の様だ。
「後、紛争が激しく濃密な魔空間が発生する程、魔物連中も活性化し、魔石も成長し強力になっていくっすね」
「なるほど」
「まあ、魔石が成長すれば利益も上がるんすよね」
「そうなるんですよね」
(そう考えると冒険者は戦争が起こると仕事が増えて、一攫千金のチャンスなのかもな・・・)
俺はそんな不謹慎な事を考えるのだった。
「そう言えば、若頭」
「あ、はぁ・・・」
アームといいもう諦めるしかないのかな?
「頭から、手紙を預かってたんですが」
「そうなのですか」
「へいっ、これです」
「ありがとうございます。・・・これは」
「祝いの手紙らしいっす」
「はぁ・・・」
バドーがケンイチから預かったという手紙。
バドーは祝いの手紙と聞いたそうだが、これは・・・。
「ケンイチ様は、祝いの手紙だと・・・」
「へい、若頭が頭と同じ国から召喚されたと聞いていたので、日本?でしたか、其の国の字で手紙を認めたらしいっす」
「そうですか・・・」
「どうかしましたか?」
「い、いえ、何でもないですよ・・・」
祝いの手紙ねぇ・・・。
どうやらバドーは此の手紙に書かれた文字を読めないらしい。
まあ、日本語で書かれているので当たり前なのだが・・・。
バドーから渡されたケンイチよりの手紙。
其の手紙には日本語でしっかりと『果たし状』と記されていた。
俺は其の手紙をそっと、アイテムポーチに仕舞うのだった。
バドーと別れ学院に移動した俺達3人。
お目当てのルチルは、学院のグランドに張られたテントの周りで配給を手伝っていた。
「ルチル・・・」
「どうしたの、司」
「それは配給だぞ」
「うん、そうだね?」
「・・・」
「ん?」
「・・・」
「ち、ちょっと司っ、僕だって配給をつまみ食いしたりしないよ‼︎」
「そうか・・・」
「もうっ‼︎」
頰を膨らませムッとするルチル。
「悪かったよ、ルチル」
「む〜、まあ良いけど。それで何か僕に用?」
「ああ、それなんだが・・・」
俺はルチルに魔物の件を伝えたが、その返事は芳しいものではなかった。
「う〜ん、折角の話だけどごめん、パス」
「無理なのか?」
「うん、濃い魔空間は本当にあまり得意じゃ無いんだ。それに昨日の疲労も残ってるし、多分ついて行っても足手纏いになるだけだろうしね」
「そうかぁ・・・」
(危険も伴うし、無理強いは出来ないな・・・)
俺達はルチルのスカウトを諦め、ギルドのアームの下へとむかうのだった。
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