第115話~白いツバメのお願い
私達は、チック達に手を振り虹を望む丘を目指す。さて丘がある場所はこっちでいいのでしょうか?
出会った人に聞こうと思いずっと歩き続けて、山を登り切っちゃった。
「いい眺めだね」
「うん」
ユージさんの言葉に私は頷く。
見下ろした風景は絶景!
山に囲まれた湖が見える。
「ねえ、君達!」
うん?
声を掛けられた私達は、辺りを見渡すも誰もいない。
「上よ。上空よ」
そう言われ見上げれば、白い鳥がいた。
「白いツバメだ!」
ツバメ? 本当だ!
「君達が錬金術師様かい?」
「そう言われているよ」
「そうか。探していたんだよ」
そう白いツバメが言うと、足で持っていた物をユージさんの前に落とした。驚くもユージさんはそれを拾う。巻物なんだけど。
「お願いがある。そこに見える湖を元に戻してほしい」
そう言われ湖を見るも、変な所はないように見えるんだけど……。
「山に囲まれた湖は、それぞれの山から川の水が流れ込んできている。今までは、呪いが浄化されていた。しかし、このごろ浄化されない水が流れ、湖がけがれてしまった。浄化された水は、キラキラ輝く」
湖を囲んでいる山は、私がいる山を含め三つ。
もしかしてだけど、山から流れている水をきれいにしてって事?
「それぞれの山の上流に行き、浄化してほしい。やり方はそれに書いてあるよ。たぶん……。昔浄化してくれた錬金術師様が置いて行ったものだから」
「わかりました」
ユージさんが、引き受けると頷いた。
「では私は、あちらの山の麓で待っている」
「はい。あのそれで……」
「行っちゃったね」
「丘の事を聞こうと思ったんだけどね。まあこれを終わらせて麓に行けば聞けるよね」
ユージさんの言葉に、私は頷いた。
「じゃまずは、川を見つけないとね」
ユージさんは、拾った巻物を広げる。
地図は載っていなかった。けど、魔法陣が描かれている。
あと、水車の絵とか……。この水車に魔法陣が描かれているみたい。
「これには地図は載ってないか。じゃ板の地図で川を探そう」
たぶんそっちの方が早い。
私達は、水色の線で描かれている川に向かった。
しばらくすると、水の流れる音が聞こえて来る。
そして、水車も見えた。
けどおかしい。水車は動いていなかった。
近づいてわかったけど、水の流れる位置が変わったようで、水車を経由していない。
「水の流れを変えれば大丈夫かな?」
ユージさんはそう言うと、昔川が流れていただろう溝の上流を見つめた。
「ちょっと行ってみようか」
私達は、上流へと歩き出す。
板の地図を見れば、すぐに川に行きあたるはず。
で、すぐに川に着いた。
川は、大きな石で塞がれた為、道筋を変えたみたい。この石をどかせないといけないよね。
「ユージさんで、あの石って動かせる?」
「どうだろうね……。脇を掘って戻すって方法がいいかな? ただ、今流れて行っている方に、蓋をしないといけないね。この石ってどこから来たんだろう?」
ユージさんがそう言うので、私も辺りを見渡した。
ちょっと上の方に岩肌になっている所がある。そこから転がって来たのかも。
「ちょっと行ってみよう」
「うん」
その岩肌になっている場所に行けば、塞いでいた石ほどではないけれど、大きな石がいっぱい見える。
「うーん。これを使おうか」
「え? これを運ぶの?」
「それを使ってね」
ユージさんは、私を指さした。いや私の背中のリュックを指差していた。
そっか。リュックに入れれば、軽々と持って行ける!
「石を僕が入れれば、僕が出して川に置けて蓋ができるかも」
「うん」
私は、リュックを下ろし口を開けた。
ユージさんは、積みやすい形の石を選びリュックの中へと入れて行く。
「まずは、縁を掘って川の流れを戻そう。軍手借りていいかな?」
川まで戻って来た私達は、作業を開始。と言っても私は見ているだけだけど。
ユージさんが川に入ると、腰まであった。私なら溺れます。
少し掘っていると、少しずつ水が溢れる様に流れ出した。それからユージさんは、石の端を押して、ドアを開ける様に石を端に寄せた。
すると川の水は、ドッと元の流れに戻り迂回していた方には少しだけになる。
ユージさんは、リュックから石を出して壁になる様に積み上げていく。石は、二重三重に太くする事で、隙間から水が出てこなくなった。
「ふう。これでよしっと」
「ユージさんご苦労様」
私達は、水車の様子を見に戻った。
「あれ……」
私は、首を傾げる。
水は確かに水車を経由しているのに、水車は動いていないのです。
どうなってるの?
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