第82話~トナカイの錬金術師

 街を出てからは、走って移動しました。私は、ユージさんに抱っこです。

 モーグの森と反対側の東側の奥。発見されたミチル迷宮を通り過ぎ更に奥に行くと、開けた場所に出ました。

 地面は、ごつごつとした岩。黒っぽい岩で硬そうです。


 「ここだ」


 ラキガさんがそう言うと、ユージさんは私を下ろしました。

 私達は、辺りを見渡します。

 遠くに見えるのは森。目の前に、大きな岩の山。で、その岩の麓がここで、大きな木が一本。

 何となくロウさんが停まっていた木に似ている。


 その木の下にミケさんがいます。って、ギルドのメンバーもいるようです。皆、つなぎを着ています。


 「加護を持つ者を連れて来たか」


 声の主は、木の上に停まっているカラス? です!

 普通のカラスより大き目です。きっと番人です!


 「加護ねぇ……。なるほど。それをもらえるとここで活動出来るって事か」


 隣に立つラキガさんは鋭いです!


 「彼らにきんを探させるのはダメだ」


 カラスはそう言った。

 私とユージさんは、顔を見合わせた。

 協力出来ないと、装備を更新できません!


 「うんじゃ、ハドさんよ。アイテムを借りて俺達が探すのはいいか?」


 ラキガさんが、あのカラス――ハドさんに聞きました。


 「そうだな。一つだけならいいだろう」

 「だそうだ。お前達も勿論、ハドさんの声聞こえているだろう?」


 許可を貰うとラキガさんは、私達に振り向き言ったのです。


 「貸てくれれば、装備更新してやるよ。もし金が見つからなくてもな。どうだ? どうせ何かアイテムを使って探す気だったんだろう?」


 「まいったね……」


 ラキガさんの言葉に、ユージさんは苦笑い。

 私達は、金を地道にダウジングで探すつもりだったのです。というか、それしか方法が思いつきませんでした。


 「いいかな?」


 私に振り向いて、ユージさんが許可を求めてきました。私はそれに頷き、リュックからダウジングを出して、ユージさんに手渡します。


 「これ、ダウジング。使い方は、ここに魔力を注ぎ込んで探したい物を言うだけ。時間は10分で、近場だけだけどこれで探せる」


 ユージさんは、ダウジングの先についている魔石を指差して、ラキガさんに説明をする。

 ほーっと、ラキガさんはダウジングを見つめて聞いていた。


 「これどうやって手に入れたんだ? こっち側にはこういうのが宝としてあるのか?」

 「それは内緒」

 「ホント、お前ら、秘密主義だよな」


 そう言いつつラキガさんは、ユージさんからダウジングを受け取った。


 「ソレイユちゃん、元気だった?」


 体をかがめてミケさんが、私に挨拶をして来た。


 「うん。元気です……」


 って、抱き上げられちゃいました!


 「あの……」

 「あぁ、ずっと一緒に居たいのに!」

 「あぁ、その子がソレイユちゃん? へえ……。本当に子供だ。プレイヤーなんでしょ?」


 と私を覗き込んだのは、なんと角がある男性です! 私も目を引きますが彼も目を引きます!

 勿論耳もちゃんとあります。猫や犬より細目で少し長い耳。耳も髪もうす~い茶色。角は枝の様に先の方は分かれています。ちなみにつなぎは赤。何となくシカを連想させます。


 「あ、気になった? 彼ね、シカに見えるけどトナカイなのよ!」


 私がジッと見ていたせいか、ミケさんがそう教えてくれました!


 「俺は、サリム。宜しくな」

 「はい……宜しく」

 「いつまでそうしてるんだ? ミケ行くぞ。サリム。後頼むな」

 「了解!」

 「じゃ、また後でね」


 ミケさんは、残念そうに言うと私を下ろし、手を振ってラキガさんについて行きました。


 「じゃ、二人共こっち」


 サリムさんだけ残り、私達を木の側まで連れて行きます。

 そこには、色々と荷物が置いてある。荷物番も兼ねているみたい。


 「えっと。君が装備を修理してくれるの?」


 ユージさんが聞くと、そうだとサリムさんは頷きました。


 「で、どっちが魔法陣を扱えるの? このイベントは、魔法陣を扱える事で錬金術師だと認めてもらえるらしいからさ」


 私達は顔を見合わせました。

 確証はありませんでしたが、やはり魔法陣を扱える人がいないとダメなようです。


 「まあ、いいけど……」


 サリムさんはそう言うと、置いてあった杖を手に取りました!

 あれはどうしたのでしょう? 私達の様に手にいれた?!


 そう思っているとサリムさんは、自分を中心にくるっと一回転。杖の先で円を描きました。そして、ちょんと杖で円の中心を突くと、驚く事に模様がサーと出来上がって、魔法陣の出来上がりです!


 「え~!! 何これ!」

 「すご……」


 私もユージさんも驚きを隠せません。


 「あれ? 君達魔法陣を描けるんじゃなかったの?」


 私達の反応を見て、サリムさんも驚いています!

 もしかして、最終的にこう出来るようになるのでしょうか?!

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