第47話~急げ!魔法陣を発動せよ!

 ユージさんに抱っこされ、走って魔法陣に向かっています。


 シェリルさんが結界を張っていられる時間が24刻。つまり二日間。

 森の中だけど数は五つで下書き済みたいなものだし、魔石でなぞればOKなはずだったんだけど……。


 魔法陣はなんと、精霊に合わせた大きさだったのです! つまり小さい! 精霊と同じ大きさにならないと見えないという事で、私達自身小さくされたのでした……。って見れば私達にも精霊の羽根が!!


 私の腰ほどの背丈だった草は、木の様な大きさになり、その間を走り抜ける。

 凄いのは地図です! 私達の大きさに合わせて地図の表示も変化しました! これを見ると結構遠い……。

 ユージさんが走って四時間はかかるかもだって。


 私に出来るのは魔法陣を描く事。


 「僕は走る事しか出来ないから」


 逆にユージさんがそう言った。

 落とさない様にギュッと杖を握りしめ、ユージさんに私は掴まっていました。シェリルさんが言っていた通り、恐怖心はなくなっています! この杖自体、ちょっとした結界みたいなものらしいのです。


 うん。こういう杖も作りたい。

 この杖も魔法陣を描いた錬金術師の人が置いて行った物らしい。

 つまりこの森は、錬金術師によって守られた森だったのです!

 設定が凄すぎです!


 「あれかも!」


 そんな事を考えていたら、一個目の魔法陣に到着です!

 目の前に私の背丈と同じぐらいの直径の魔法陣があります。

 ユージさんは、私を魔法陣の前に下ろしました。


 「ありがとう。ユージさん」

 「うん。後はお願いね」


 私は頷き、杖を落とさない様に注意しながら、背負っていたリュックを地面に置く。そこからテントを出し、ユージさんが張ります。

 私は、魔法陣を描く為に、魔石を取り出す。


 六つの魔法陣は、手前に一つ奥に一つ、左右に二つずつの線でつなぐと六角形になるように設置されていました。そして一番奥の魔法陣だけ、なんとか作動しているのです。

 私達は、時間短縮する為に、ここにテントを張り、左右どちらか二つを作動させたらワープでここに戻って来る作戦を立てたのです!


 「僕はスタミナを少しでも回復させる為に寝っ転がってるね」

 「うん……」


 ユージさんに振り向けば、いつもの如くうっとりたような眼差しでこっちを見ています。その視線、恥ずかしいんですけど!


 魔法陣に集中と、模様を中心から描いて行く。杖は夢中になっても離さない様に意識して握る。

 十分程で模様は描き終わった。後は円を描くだけです。


 「これでOKっと」


 円を描き離れるもうっすらと光り輝いているけど、発動していないような気がする。私が今まで見てきた魔法陣は、発動する時に光が上に駆け上がっていました。


 「ねえ、これ発動していると思う?」

 「うーん。何となく違うよね? 発動する前と同じように思うけど……」


 ユージさんも私と同じ意見でした。どうしましょう! あ、おじいちゃんの本! あれに何か書いてないかな!?


 「本を見てみる!」


 リュックに近づくと、ガシッと手を握られた!


 「え……」


 驚いて顔を上げる。困り顔で私を見つめるユージさんの顔がありました。


 「落ち着いて。これから手を離しちゃダメでしょう?」


 握られた手を見れば、杖を握っている手の上から握られていました。私は無意識に杖を置いて、リュックに触ろうとしたみたい。


 「あ、ありがとう。気を付けるわ」

 「手を離すよ?」


 私が頷くと、ユージさんは手を離しました。杖を握った手を胸に持って来て、私は深呼吸する。

 落ち着いて、私!


 本をリュックから取り出し、杖を落とさない様に本をめくる。


 「えっと、魔法陣の起動の仕方」


 フッと文字が浮かび上がる。


 「あった!」


 おじいちゃんは書いていてくれました!


 魔法陣を手動で発動させる時は、魔法陣の中心に魔力を流し込む。杖がある場合はそれを使うとよい。五秒ほどで発動する。

 消費MP10。


 よかったぁ。ってよくない! 私MP10なんだけど! 一回分しかないわ!


 「ユージさんどうしよう。方法はわかったけど、MP10必要なんだって! ここしか発動させられないわ!」

 「落ち着いて! まずは発動方法を教えて」

 「魔法陣の中心に杖を使って魔力を流し込むだって。MPを10消費するの」


 ユージさんの質問に頷いて答えると、ユージさんもほほ笑んで頷きました。


 「だったら二人で行おうよ。君が杖から手を離さなければいいんだよね? 僕も一緒に握って、僕の魔力を流し込む。まずはそれを試してみようよ」

 「そっか! そう言う事も出来るのね! よかったぁ」


 ユージさんは頼りになります。

 うん? またユージさんが私の頭を撫でます。見れば嬉しそうです。まあ、今回もよしとしますか……。


 ユージさんの提案の通り、二人で杖を握って魔法陣の中に立った。


 「行くよ」

 「うん」


 ユージさんが杖に魔力を流し込むと、それは魔法陣へ流れて行ったようで、一瞬光が揺らぎました。ユージさんが杖から手を離し、私達は魔法陣の外へ。

 直ぐに魔法陣の光が駆け上がって行きました! 成功です!


 「やったわ!」

 「よかった!」


 って、喜んでもいられない。次の魔法陣までは走って八時間かかるみたい。

 リュックを背負って用意が出来ると、ユージさんは私を抱き上げる。


 「走るよ」

 「うん」


 ユージさんは、次の魔法陣に向かって走り始めました。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る