第41話~トンネルを掘ります!パート1
次の日INすると、今回もユージさんがもうINしてガリガリと臼を引いていました。しかもタブレットを見ながら……。
「あ、おはよう。UPされてるよ」
部屋から出て来た私を見て、ユージさんはそう言いました。
トンネルのクエストがUPされたようです。私はちょこんとユージさんの膝の上に乗った。もうおいでおいでされなくても乗るのにためらいがなくなってしまったようです。慣れって恐ろしい……。
「これだよ」
トンネルのクエストは特例扱いで、受けてから90日間つまりゲーム内一年の猶予があり★は三つ。その間、他のクエストも受けられる。内容は指定された場所にトンネルを掘る事。
早速受けクエストをする事にしました。作業で出た土を入れるのに大きな袋を大量に渡され、それを持って現場へと向かう。
「それにしてもそのリュック便利だね。口から入る大きさならいくらでも入るなんて!」
ユージさんは、羨ましそうに私のリュックを見て言った。
渡された袋は私のリュックにしまったのですが、ユージさんが言った通り大量の袋はどんどん入って行き、全てリュックに飲み込まれました。ですがリュックの見た目は変わりません。重さが変わらないどころか、見た目もそのままで驚くほどの収納量だったのです!
「私もこんなに入るとは思ってなかったから驚いているんだけど……」
「流石魔具だよ。それが発明品なら容量までは増やせないだろうから」
「そういうもん?」
「重さを軽くするか容量を増やすか、どっちかになると思うよ。しかもそれ、他の人が見たら中身が入ってないリュックだからね。魔具を目の当たりにして感動してるよ」
ユージさんはうんうんと頷きながら言いました。
私もですよ、ユージさん。
魔具だからと言われても不思議でなりません。
重さをほとんど感じない摩訶不思議なリュックを背負い私達は、指定された場所を目指す。そこは私達が確認しに行った場所ではなく、既に崖がある事が確認されている地図に描かれている場所でした。
モンキータウンを出て森の中を三時間ほど行ったところにあった。と言っても板の地図を使って最短ルートを辿ってですけどね。
崖についた私達は見上げる。ここも崖の上には木などはありません。
「私一度登って向こう側見てみる」
「気を付けてね」
私は頷いた。
向こう側がどうなっているか掘る前に見ておいたほうがいいと思ったのです。魔物はいない事にはなっていますが、穴を開けた途端水が流れ込んできたりしたらそれで死亡ですからね。
ささっと登ると立ち上がり崖の向こう側を見た。
そこには雄大な草原が広がっていた。風が吹くと波の様に草がザーっとなって見ていて飽きないです!
「どう? どんな感じ?」
「草原! 掘っても大丈夫そうです!」
ユージさんが気になって聞いて来たので答えたら早く見たいっていう顔つきになりました。では下りて掘りますか。
トンネルの大きさは高さ三メートル横三メートルの正方形に掘って行く指示。さて横は問題ないのですが高さをどうするかですよね~。
「どうやって高く掘るかだね」
ユージさんも同じ事を思ったみたい。
今までは自分が動ける大きさでよかったから大きさを気にしていなかったのですが、掘る段階になって気が付きました。
取りあえず三メートルを計らないといけないので、借りたメジャーをリュックから取り出す。これは30センチの棒。魔力を使って長く出来るのです。
それをユージさんに渡すと、崖に当てて地面に立て抑えながら言った。
「三メートルに」
するとスッと棒が伸びた! そうなると聞いていたけど驚きです。
「わぁ、すごーい」
「だね」
私が驚きの声を上げると、ユージさんも頷きながら答えた。
棒の端を見上げる。三メートルって結構高い。
「うーん。あの高さか……。僕が肩車でもする? それでも足りないと思うけど、そこに穴を掘ってその穴に立って掘ったら三メートルにならないかな?」
ユージさんは、崖を見上げ言った。
確かにそれなら何とかなりそう?
まずはユージさんの意見を試してみる事になりました。
軍手をはめていざ、チャレンジです。
ユージさんに肩車をしてもらい手を伸ばしてがりがりと削ると、ぼろぼろと土が落ちてユージさんに降り注いでいます!
「ユージさんに土が……」
「いいよ。大丈夫だから続けて」
「うん。ごめんね」
今はこれしか方法がないので仕方なく掘り進めて行った。
やっと自分が入れる程の穴が空き、ユージさんの肩に立って穴に入り大きくしていく。だけど結局三メートルまで足りません。
「この方法は無理か……。無理しないで何か方法を考えよう!」
穴の中でジャンプしながら天井を掘ろうと頑張っているとユージさんがそう言ってくれました。
そして私達は崖の前で作戦タイムです。
「うーん。はしごを作るとか……」
ユージさんが膝を抱え崖を見上げて意見を出しますが、三メートルのはしごを作るとなると、直径三メートルの魔法陣を描かなくてはなりません。私には描ける自信がありません……。
「直径三メートルの魔法陣を描く事が出来るかな?」
「あ、そっか。魔法陣も三メートル必要なのか……」
ユージさんもその事に気が付き、ダメかぁと呟く。
後50センチ程高く掘る方法ってないかなぁ……。何か台を作るとか? うーん。でも下が岩で安定しないから50センチだけど立つの怖いんだよね。特に崖の外の付近とか……。
「安定する台が作れたらいいのに……」
「そっか! 三角の台だよ!」
私のセリフにユージさんが叫んだ。
「三角?」
ユージさんが頷く。
「斜めになってもガタガタはしない。もうちょっと、いや三メートル分幅掘った後に台を置いて上を掘ればいいんじゃない? 作って試してみない? 崖の中じゃなくてちょっと足場の悪いそこら辺で! それで大丈夫そうなら崖の中で。どう?」
私は大きく頷いた。
試してから使うなら怖くないかも。
私は早速、粘土の魔法陣を描く。土はさっき掘って出たのがあるのでたっぷりあります。それにユージさんが魔石の粉を混ぜる。
ちょっと大きめに作った魔法陣に大量の土を入れ、今までで最大量の粘土の出来上がりです。
「すごい量だね」
「うん。広さが違うのを何個か作ろうと思うんだ。悪いけど魔法陣を数個お願いしていい?」
「うん!」
私は頷き三角の台を作るユージさんの横で窯の魔法陣を描く。慣れたもんで描き終わるのに15分ぐらいになった。失敗したら怖いから下書きをしているけど一回で描く事が出来る様になりました!
一時間後ぐらいに三つの魔法陣にそれぞれ三角の台を入れ作り上げた。
一つは私の肩幅ぐらいの大きさの三角形。次は私の肩ぐらいまでの高さがある大きさの三角形。そして最後の一つは三段になった台です! 大きさはさっきの肩ぐらいの大きさで一片が階段みたいになっていたのです!
よく考えれば、いきなり50センチだとその台に登らないとダメだとそれを見て気づきました。
ちょっと安定の悪いところに置いて試してみたけど大丈夫そうです。まあ、掘ったところを擦るようにしてならせば大丈夫でしょう。
問題はどうやって崖の上に持ち上げるかでしたが、見た目よりずっと軽いので私でも持ち上げる事が出来ました。スタミナが減るかもですがリフレッシュして回復という手もあるのを思い出し、台を崖の上に置いてからリフレッシュする事になった。
まず横幅を計る為に三メートルの棒を倒し、先ほどの穴を掘り進めました。崖の下に落とした土をユージさんがかき集め袋に入れて行く。
「ねえ、ソレイユさん!」
「はい? 何?」
始めて十分程に声がかかった。穴から顔を出す。
「ロープたらせないかな? 三メートルの幅掘ったら台を上にあげて僕も上に登りたいんだ。じゃないと土を下に落とすのが大変になるでしょう?」
なるほど。奥に掘り進めて行けば外までの距離が長くなる。ロープを引っ掛ける場所を作ってって事ね!
「うん。わかったわ」
私は三時間程掛けて三メートルの幅を掘った。台が置ける程のスペースも確保しロープを引っ掛ける場所を作りたらす。台を崖の上に引き上げ一旦私は崖の下におりた。
「リフレッシュしておくわ」
「そうだね」
私は魔法陣を二つ描いた。ユージさんの分も。
ユージさんは土を被って土まみれだったからこれで綺麗になる。
「あれがとう。僕の分まで」
「うん。じゃ、入りましょう」
二人で頷きあうと、魔法陣の中へ。二つの魔法陣は同時に光が駆け上がった――。
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