第3章 7-7 接点
スヴァロギッチは怒りを露わにして、思い切り両手を握って振りかぶり、ハンマーパンチを自分へしがみつくゾンの背中めがけて叩きつけた。ゾンが打ちのめされ、仰け反ってグラウンドに倒れた。
そこへスヴァロギッチがとびかかり、雄叫びを上げてゾンを何度も蹴りつける。
ガクン!
(おいおい、まじめにやべえぞ、このままじゃ……!!)
ゾンが本気で焦った、そのときだった。
山桜桃子の心の奥で、何かが開いた。
山桜桃子は一瞬だけ、幻を見た。
いや、それは幻なのかどうか。
巨大な山脈の中腹に、大きな洞窟があって、洞窟の奥深くに城のような遺跡があった。その遺跡のさらに最深部に、大きな地下水脈めいた水のイメージと、宝石のような、結晶のような、氷のような……とにかく、碧と蒼の透明で硬質な塊があった。その硬質の中に……。
「……ユスラ!?」
スヴェータが息をのむ。
山桜桃子の身体から、未知の力が溢れ出るのを感じた。その眼が、不気味な藍翠色に光った。
「……おい、ちょっとまて、こいつあ……!!」
ゾンがスヴァロギッチもそっちのけで校舎の屋上を見やった。
山桜桃子から、膨大な魔力が雪崩を打って補充される。山桜桃子が、ゾンのいた世界とつながっているのだ。
「おい、オレは何もしてねえぞ!!」
さすがにあせる。
「……いや、待て……こいつぁ……!」
ゾンは気づいた。
これは、ゾンが強制的に「つないで」いるのではなく、山桜桃子が自らの力でつながっているのだ。
「……なんだと……まさか……おい……そうか……そういうことか……!!」
ゾンが、ガッシとスヴァロギッチの足を両手でつかんで蹴りを止めた。
「ユスラのやろう……『接点』だったとは……!!」
ゾンの力がいや増す。魔力が充填されてゆく!!
「ハハハ!! そうかそうか、そうだったのかい!! ハハハハハ!!」
グ、グ、グググ……ゾンがスヴァロギッチの足を掴んだまま、ゆっくりと起き上がった。凄まじい力が沸いてくる。
「どうりでよう! オレ様が何の因果も理由もなく、あんな異界のガキへ
ゾンが豹変する! 再び第三天限解除……そして、第四天限までも!!
スヴァロギッチの足を持ったままグッ、グッ、ググッと巨大化し、放り投げて再び
「もういいぜユスラァ、そこらへんでやめておけやあ!!」
ゾンが山桜桃子へ逆接触し、解放を止めた。これ以上は不必要だし、ゾンも山桜桃子も本当に何が起こるか分からない。
ゾンの姿が、第三天限解除より一回り大きくなった。
しかし、太ったわけではない。
むしろ筋肉質にシャープとなり、尖って見える。だが尾は二股に別れ、なにより肩口よりもう一対、腕が生えて四本腕となった。剣のように刃のついた全身の鱗が逆立ち、剣山めいた漆黒の姿に赤々とその眼が燃えている。刀剣めいたシャープな漆黒の翼も二対、四枚ある。
そして天へ向けて凄まじい咆哮!! 再び周囲の火災が全て鎮火する!
スヴァロギッチの声も聴こえぬほどの咆哮のまま、起き上がりかけたスヴァロギッチめがけ、ゾンが跳びかかった!
バオオオオ!! ガオオオオオ!! ドオオオオオオオ!!
もはや咆哮とも風の音とも地鳴りとも火山の噴火とも分からないような凄まじい音がして、火山雷めいて稲妻を発しながら、ゾンがスヴァロギッチの炎の肉体をその鉤爪で毟りとってゆく。スヴァロギッチは懸命にその庇い手から炎を吹き出し、かつ全身よりも猛炎を吹き上げて抵抗したが、ゾンはまったくかまわずにその四本腕の爪をつきたてた。
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