第2章 4-3 石炭でも食うか?
「
ベッドのユスラの横へ、ねえちゃんが坐る。
「薬は?」
「のんだ」
「使い方は教えてもらった?」
「うん……お手伝いさんたちに」
「ごめんね……ママじゃなくって」
ガムねえちゃんが、ユスラをそっと抱きしめる。その頭へ頬を当てて、肩をさすった。ユスラは真っ赤になっていたが、
「いいえ……」
「私が、さっさと
「そんな……」
「でも……
「うん」
「そういえば、ママに……櫻子さんには?」
「まだ」
「私から云っとく?」
「いや……自分で云う」
「そう」
ねえちゃんはユスラの肩をずっとさすっていた。
「夏休みには、家に帰ったら?」
「うん……考えとく」
「体調管理も、狩り蜂の大切な仕事よ。がんばろう?」
「うん」
やがて何度もうなずき、ガムのねえちゃんは帰って行った。ユスラはしばらく放心していたが、やがてメシ食って湯の雨を浴びて、デンワで何やら自分のハラ痛に関する調べ物して寝た。
生きてるって、面倒だねえ。
次の日、ユスラは少し回復したようだ。
前日よりは元気に、登校する。
すっかり雨が上がった。天気がいい。公園の碧が光ってまぶしいぜ。気温もグッと上がってきた。夏が来るんだな。
「おい」
いきなりオレが現れたので、また何かあったのかとユスラが驚いて周囲を見渡す。
「ど、どうしたの!?」
「石炭でも食うか?」
「ハア!?」
ユスラが固まる。セキタンってなんだっけ……という表情でしばらく視線を泳がせていたが、やがて思い当たったらしく、
「た、食べるわけないじゃん!!」
とオレを怒鳴りつけ、それから眉間にペンでも挟めるかというほど眉を寄せた。
「……あんた、石炭なんか食べてたの!?」
「……いや……」
「なに云ってんの」
「…………」
オレが黙っていると、ややユスラも考えて、あっという顔をする。
「ちょっと、もしかしてそれ、せきは……」
とたん、今まで見たこともねえくらい、きっと脳天にヤカンを乗っけたら湯が沸くくれえ顔を真っ赤にして、
「ふざけんな、この!!」
呪文の高速詠唱もかくやという早口で罵詈雑言をわめきちらしながらオレへ石ころをひたすらぶつけると、怒り狂って学校へ行っちまった。
「…………」
オレ、なんか間違ったこと云った?
5
わりぃわりぃ。
やっぱり、いくら祝い事だっつっても石炭は食わねえらしい。そらそーだよな。オレだって食わねえよ、そんなもん。おかしいと思ったんだよ。こんな脳みそ腐ったゴステトラが調べ物したって、限界があるってことだ。しかたもねえ。ハハハ。
そもそも、他のゴステトラ連中に聴いたのが間違ってたぜ。
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