第2章 1-1 ゾン
ところで、この屋敷にいるといろんなゴステトラを見る。この屋敷はすげえよ。たぶんこの国でも五本の指に入るゴステトラやゴステトラ遣いが出入りしてやがるぜ。オレやユスラも含めてな。
いや、ユスラは違うな。
ダントツは、何と云ってもあのばあさんだ。ありゃあ、別格だね。次元が違うよ。バケモノだ。あんな人間が、こっちの世界にもいるんだな。オレのいた世界だったら大魔導士……いや、魔王クラスだ。ほんとだよ。
それにばあさんのゴステトラがスゲエよ。「ウスイサン」ってみんな呼んでるんだが……この国の昔の戦士のゴステトラだ。メチャ強いね。
オレのほうが強いけど。
だが、オレを十とすると七は行ってる。
でもまともに戦ったら、向こうが勝つよ。余裕でね。
なんたってユスラとあのばあさんじゃ、まったく話にならないレベルで相手にならないからな。
ゴステトラ遣い……狩り蜂とかいう名前だ……狩り蜂としてのばあさんを十とすると、ユスラは「れーてんに」くらいだよ。マジで。
そりゃあ、合わせて十七と十.二じゃ、勝負にならねーわな。
とにかく、今のユスラは狩り蜂としてドシロート以下だから、難しいね。オレをまるで遣いこなせてねえ。オレの力の十分の一……いや、百分の一……もしかしたら千分の一も引き出せてないよ。ゴステトラも、遣い方次第だからな。
でも、オレなんていうメチャクソ強い神ゴステトラが出ちまったもんだから、逆にやるしかねえんだよ。ばあさんの後継者候補にさせられちまってる。ザコを倒して終わる一生じゃねえんだ。良くも悪くも。
でもな……こんな生活じゃ、早晩、死ぬよ、アイツ。
かわいそうだけどな。
アイツが死んだら、オレは解放されるんだろうか。それとも、あの世のさらに向こうへ行っちまうんだろうか。消滅するんだろうか。またどっか違う世界に転生するんだろうか。元の世界に戻るんだろうか。分からないね。
わからねーけど、今日も元気に土蜘蛛を退治するわけよ。
「ゾン……ゾンったら、今日はなんでとっとと出ないわけ!?」
ニチヨーっつう、こっちの世界できまってる休みの日だってのに、朝っぱらからご苦労だねえ。どれ、よっこらしょ。こっち側から出ますよ……と。
あ、こっち側ってのは、なんてえのかな。ユスラの世界のすっげえ近くで、すぐ裏っかわみたいなところだ。ゴストテラは、たいていふだんそこにいる。しかも、つながってるらしくて……近づくと、いろんなゴステトラと会えるんだ。おもしれえよな。
ゴステトラ同士は、別に仲よくもなんともねえけどよ。なんと、話をするくらいはできるんだぜ。
「なにやってんのよ、もう!」
あーあ、またユスラのやつプンスカしやがって……女って、どこの世界でもみんなこうなんかね。
いや……ユスラがイライラしすぎなんだよなあ。環境がいきなり変わって、アイツなりにストレスがたまってるんだろう。考えてみりゃ、大変だよ、アイツも。まだ子供なのに、いきなりこんなバケモノを遣ってバケモノ退治の日々だもんな。ガチで命かけてよ。
「ゾンンンーってば!!」
わかったわかった。うるせえなあ。
えー、どれどれ……今日のお相手は……と。
あーだめだこりゃ。
なんだい、こいつ。
カラスの土蜘蛛だ。バケガラスってやつだな。しかも一匹……。たった一匹だぜ。こんなもん、オレの鼻クソで倒せるよ。いちいちユスラに相手させてんじゃねーよ。もう、モクロクだかってクラスなんだろう?
ばあさんも、とっくにオレのこと気づいてるはずなんだけどなあ。まーでも、問題はユスラだよな。ばあさんだって、早々ユスラに死なれたら困るだろうし。オレは困らねえけど。せっかくこっちに来たんだから、つきあいってもんもあるしな。
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