◇
支援者。
黒川一士の仲間ではなく、彼の行動に賛同し、自発的にサポート役に回っている存在だ。しかしその支援者の数も、性別も、職業も、何もかもが謎のまま、今日に至っている。主に逃走の手助けをする彼ら彼女らは、もしかしたらこのカフェテラスで食事をとっているカップルの中にもいるかもしれないのだ。それどころか、この料理を作ったシェフ、道行く人々、路上で演奏しているギタリスト、その全員が支援者と言う可能性もある。
もちろん、目の前でがつがつとチキンカレーを食べる虎波生絲も、例外ではない。灘の推測では、黒川一士を支援する者は『黒川一士に何らかの恩を抱いている』という共通点を持っている、というものだ。つまり、虎波のように接点のない人間は、感化される以外に彼を支援する理由を持たないということだ。だとしても、疑心を捨てきってしまうのは危険でもある。
白か、黒か。おそらく灰色だ。
支援者の中には情報を改竄することのできる力を持っている者もいる。警察官のデータベースを改竄することも可能と考えておくべきなのだ。そうなると、調べてきた警察官の内部情報も、信用度は限りなくないと言ってもいいのだ。つまり、灘は情報を洗い出す中で、改竄の痕跡を探していた。虎波はそれを知らない。疑いの目を向けることへの罪悪感もあるが、何より自分しか信用できないという世界が、灘の息を詰まらせる。
「……大企業や有名企業の社長から一般人、学生、ご老人、幅広い層に黒川一士を支援する人間が存在していると言われている。だが、どれだけこちらが捜査してみても、その痕跡すら見つからない。誰かが情報操作及び証拠隠滅を図っているとしか考えられん。警察内部を調査するのは当然のことだ。奴を支援する者がどのぐらいの範囲まで広がっているのか、我々は把握しようがないのだからな」
「だから、まずは身内から、ですか」
「今までの捜査本部ではお偉いさんを含めた百名以上の規模だったからな、動くにも動けなかった。幸い、今はお前と俺一人の二人だけ。いくらでも手を広げられる自由を手に入れたわけだ」
監視の目もほとんどない。ただ、不和警視に知られたのは想定外。そして、その不和警視の経歴等はとても綺麗で、綺麗で、綺麗過ぎた。
公安のデータベース閲覧権限を与えてくれたのは余裕の表れだったのか、それとも挑戦的な意味合いだったのか、あるいはまったく黒川一士と関係なく、親切心からの提供だったのかもしれない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます