終業式とスポーツ施設 2

 フルスイングでダメージを負ってしまったヤン太。

 思い切り運動をすると、胸が引っ張られて痛いようだ。


「ちょっと、本格的に運動するゲームは控えた方が良いかもね」


 僕がそう言うと、ヤン太も納得する。


「そうだな。ちょっと控え目の運動にするか」


 ミサキには激しい運動の方が良いかもしれないが、運動神経のあまり良くないジミ子とキングもいるので、そのほうが助かるだろう。



 僕らは屋上から屋内へと移動する。

 屋内のアミューズメントは手軽なゲームが多い。僕たちは案内板の前で次に向う場所を探す。


「ボウリングがあるわね」


 ミサキがボウリングに興味をもったようだ。ボウリングくらいの運動なら、みんなも大丈夫だろう。


「でも、ボウリングは別料金みたいよ。ココに書いてあるわ」


 ジミ子が案内板の端を指さすと、そこにはボウリングの料金が記してあった。


「じゃあ、今回はやめましょう。何が良いかしら?」


 ミサキが迷っていると、キングがこう言った。


「ダーツがあるぜ、やったことないけどやってみるか?」


「ルールは知っているの?」


 僕が質問すると、キングはスマフォの画面を見せながら答えてくれる。


「ダーツは遊べるゲームの種類がいくつもあって、簡単なヤツならルールを把握しているぜ」


「まあ、試しにやってみようぜ」


 ヤン太に言われて、僕らはダーツコーナーへと行く。



 ダーツのコーナーに行くと、早速さっそくミサキがダーツの矢を取ってきた。

 ちなみにダーツの針の部分はプラスチックで、怪我をしないように出来ている。


「コレを投げればいいのよね」


 そういって、野球の投球のような大きなモーションを見せる。

 キングはそれを注意する。


「いや、肘から先、手首のスナップだけで軽く投げる要領で良いから。あと矢は3本ずつ投げるから、3本もってきて。あとちょっと待ってくれ」


 そう言ってキングがダーツ機械の設定をする。


 ダーツにはいくつもゲームがあって、キングがもっとも簡単なゲームの種類を選び、人数を設定する。

 このダーツの機械は4人までで、5人という人数は設定できないようだ。


 キングは2つのチームに分けて、それぞれ交代で投げる案を提案した。

 僕たちはグーとパーでチーム分けをする。

 キングとミサキ。僕とヤン太とジミ子のチームに別れた。



 まずはミサキの番となった。


「真ん中が一番、得点が高いのよね」


「いや、違うよ。20点の3倍のゾーンがあるから、そこが一番高い」


 そういってキングは、真ん中より上にズレた位置を示す。


「えっ、あんな変な場所が高いの?」


「そう、だけど初心者が狙って出せるものじゃないから、真ん中へ向って投げればいい」


「まあ、そうね。真ん中に向って投げるわ。えいっ」


 おそらくど真ん中を狙っているはずだが、ダーツの矢はだいぶ外れる。

 11点、枠の外、4点、と微妙な得点を記録した。


 どうやら意外と難しいらしい。僕らもミサキに続く。



 ダーツの的までの距離は、およそ2メートルちょっと。

 大した距離ではないのだが、これが思うように行かない。

 3つの矢のうち、必ず一つか二つは的の外へ外れてしまう。


 僕が下手なのは運動神経のせいかと思ったのだが、ヤン太やミサキも頻繁ひんぱんに外していた。

 一方、運動は苦手なキングはかなりの好成績を収める。


「上手いけど、練習したの?」


 と僕が聞くと、


「子供の頃、吸盤きゅうばんの付いているダーツのおもちゃで遊んでいたんだ」


 という答えが返ってきた。

 どうやら運動神経より練習の方が大切らしい。



 ゲームは進み、ミサキとキングのチームと、僕らのチームの得点は開く。

 ゲームでは勝てそうにないが、これは投げているだけで面白い。

 矢が的に当る度に、僕らは一喜一憂いっきいちゆうした。



 数を投げていれば、初心者でもそのうち、まぐれ当たりをする。

 ミサキの投げたダーツの矢が、的の真ん中に当たった。


「やった! これは高得点でしょ、100点とか? 1000点とか?」


 いままで10点や20点くらいしか得点の出来ていないゲームで、インフレした数字を出してきた。さすがにそれは欲張りすぎだろう。そんな点数だとゲームが破綻はたんしてしまう。


「真ん中から少しズレているから25点だぜ」


「よしっ! なかなかの高得点ね」


 キングに得点を知らせれて、ミサキがガッツポーズを取る。



 ミサキの次にはジミ子が投げる。

 ジミ子の投げたダーツは、的の枠ぎりぎりの場所に刺さった。


「危ないわ、なんとか得点を取れたわ」


 ちょっとホッとするジミ子。


「そこはダブルの位置だな。14のダブルで28点だぜ」


「ほんと? やったわ」


 ちょっと嬉しそうに笑うジミ子。


「ちょっとまって、さっきの真ん中より、そんな端っこの方が得点が高いってどういう訳?」


 ミサキが納得がいかないと言った表情で、僕らに訴えかける。


「いや、そういうルールなんだから仕方がないだろ」


 ヤン太があきれながら言う。


「端っこのこの部分は得点が倍なんだ」


 キングがそう説明すると、ミサキは不敵な笑みを浮かべながら、こう言った。


「分かったわ。これから私は倍のゾーンだけを狙うわ!」


 そういって、次の番からは、枠の端の小さいゾーンばかりを狙い始めた。


 初心者がそんな狭い場所に狙い通りに当るはずも無い。

 次から次へと枠から外れ、スコアを落としていった。



 ミサキとキングのチームと、僕らのチームはなかなか良い戦いになり、結果として僕らのチームが僅差で勝つことが出来た。

 ちなみに2倍よりも得点の高い3倍のゾーンというものがある。こちらは的の内側にあり、たとえ3倍のゾーンから外れても、普通の点数のゾーンに入り、得点が稼げる事が多い。

 ミサキがこちらに固執こしつしていたら、僕たちは負けていただろう。



 この後、僕らは、さらに2度ほど、組替えをしてダーツを楽しんだ。

 一通り、楽しんだ後、僕らは次のアミューズメントを決める。


「さて、次はどうしようか?」


 ダーツコーナーの横には、ビリヤード台が並んでいる。

 ビリヤード台は、ほとんど人が居なく、ガラガラだ。


「ビリヤードなんてどう? いてるよ」


「たまには良いかもな」「そうだな」


 僕に言われて、ヤン太とキングがちょっとやる気になる。


「私はルールもやったことも無いんだけど大丈夫?」


 経験の無いジミ子が、僕に質問をしてきた。


「ルールに関しては、みんなやったことがあるから平気だよ」


「それなら安心ね。みんなは上手いの?」


「いや、僕とヤン太とキングは、3~4回くらいだから、初心者みたいなもんだよ」


「それならやってみようかしら」


 ジミ子が乗り気になったようだ。


「ミサキはどう?」


 僕がミサキに確認を取る。すると、こんな答えが返ってくる。


「私はビリヤードをやったことが無いけど。やり方はマンガを読んで知っているから大丈夫よ」


「あっ、うん、そうなんだ……」


 ミサキはニヤリと笑う。

 しかしマンガで見ただけで大丈夫なんだろうか?

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