答え合わせ
チャイムが鳴りテストが終わる。
試験の監視役のロボットが「終わりデス。答案を回収しマス」と言ってテストを集めていった。
テストを回収し終わると、ロボットは「
ようやくテストから解放された。僕たちはホッとする。
担任の
「いやあ、思ったより簡単で
「大丈夫です」「楽勝でした」「余裕ですよ」
テストの手応えを感じてか、みんな元気な返事を返す。教室の雰囲気は極めて明るい。
墨田先生は満足そうに、みんなの声を聞き入った。
「そうか、そうか。それはよかった。今日はこれで授業を終えるぞ、何か質問があるヤツはいるか?」
僕が手を挙げて質問をする。
「明日からは普通の授業ですよね?」
「そうだ、普通の授業だ。本当なら休みにでもしてやりたいが、
そう言うと、ミサキが調子に乗る。僕だけに聞こえるように、小声でこう言った。
「居眠を見逃してくれるって。枕でも持ってこようかな」
「さすがに枕はマズいよ」
「うーんそうね、普通に寝るだけで我慢するわ」
授業で寝るのを前提にするのはどうかと思ったが、昨日まであれだけ頑張ったのだから、そのくらいのご褒美は許されるのかもしれない。
「他に意見は無いか? 無いなら気をつけて帰れよ! じゃあまた明日な」
こうして僕らは解放された。
放課後、僕らはどこに行こうか考える。
遠出して例のスイーツ食い放題の店に行こうという話しも出たのだが、みんな疲れているので、いつも通り、近場のハンバーガーチェーンのメェクドナルドゥに行くことにした。
僕らは馴染みの店に入ると、いつもより高いハンバーガーを頼んだ。
テスト後の祝勝会を兼ねて、少しぐらい贅沢をしても良いだろう。
ハンバーガーを受け取り、席に着くと、さっそくかぶりつく。
肉が厚くて旨みが出ている。安いハンバーガーとは大違いだ。
みんな笑顔で食事を楽しんでいるのだが、ミサキがレシートを持って固まっていた。
「どうしたの? 何かあった?」
僕がそう声を掛けたら、予想外の答えが返ってきた。
「アレ? 消費税って5パーセントじゃなかったっけ?」
「い、いつの話しなの?!」
ジミ子が驚いて声を上げた。キングが慌てて詳細を調べる。
「消費税が5パーセントだった最後の日は、2014年3月31日だな。もう何年も経ってるぜ……」
「お前、なんで気づかなかったんだ?」
ヤン太があきれてミサキに聞く。
「だ、だって。税金って計算されてるから、レシートの合計金額をそのまま払えば良いじゃない」
「ま、まあ、そうかもしれないけど……」
僕が何とか相づちを打つ。
まさか消費税を覚えていないとは思わなかった。
そういえば先ほどのテストの問題で、消費税の出てくる問題があったので、ミサキはこの問題を間違えてしまっているだろう。
ここで僕は漠然とした不安に駆られた。
「ミサキ、ちょっと答え合わせをしよう。覚えている範囲で良いから」
「うん、いいよ。今回のテストは自信があるんだからね」
笑顔で返事を返してきたが、本当に大丈夫だろうか……
「とりあえず、覚えている問題をみんなで言ってみようよ」
僕がそう言うと、さっそくヤン太が質問をする。
「本屋の店員になったときに『ブックカバーをかけますか?』と、お客さんに質問をしたら『いいです』と返事が返ってきた。ブックカバーは『要る』か『要らない』か、どっちだ」
するとミサキが自信満々で答える。
「そんなの『要らない』に決まってるじゃない」
僕らはホッとする。だが、続いてミサキは信じられない説明を加えた。
「普通だったら『要らない』という意味だけど、もしかしたらブックカバーをかけて欲しいという意味の『良いです』というケースも考えられるわ。とりあえずブックカバーをかけて文句を言うお客さんはいないし、かけて渡せば良いんじゃないかな?」
「えっ、じゃあ、もしかして」
僕が目を丸くしながら解答を聞くと。
「ブックカバーをかけて渡すから、答えは『要る』だわね」
……その説明を受け、僕らは頭を抱える。
「じゃあ都道府県の合計数は?」
ジミ子が次の問題を出した。
ミサキはかなり県名を書いて覚えていたから、これは解けるだろう。
「ええと47だね」
僕らは安心する。だが、次にミサキはこんな事を言い出した。
「47県だから、あと1都、2府、1道を加えて、51都道府県だよね」
余計な計算をして、謎の都道府県をいくつか追加してしまっている……
ジミ子があきれながら言った。
「ミサキ、都道府県名は全部言える?」
「バッチリよ、完璧に覚えたわ」
「じゃあ、数えながら言ってみなさい」
「ええと『北海道』『青森』『秋田』……、最後に『沖縄』で、あれ47しかない?」
「間違っていないわよ、47が正解よ。合計が47都道府県。県だけだと43ね」
「……そうなのね、ちょっと間違えちゃった」
舌を出してごまかすミサキ。いや、ごまかしきれてない。その答えは間違いだ。
続いてキングがこう言った。
「現役のアメリカの大統領の名前は大丈夫だろ」
「そのくらい知ってるわよ。私は幾つも知っているわ。とりあえず一番有名な『リソカーン大統領』を挙げておいたけど」
「それは初代大統領だろ。問題は、『現役大統領』つまり今の大統領の事だぜ」
「……あ、うん。ちょっと、ちょっとね。間違えたかもね」
ヤバい、ミサキは問題をよく読んでいなかったらしい。
寝不足か、詰め込んだ知識が邪魔をしたのか分からないが、これは点数がかなり酷そうだ。
……本当に頭をイジられてしまうかもしれない。
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