テスト前の混沌 1
第18回目の改善政策が終わり、教室は
「頭をイジるって言ってたぞ」「マジか」「あり得ない」
教室の中は罵倒とも悲鳴とも取れる言葉が飛び交う。
「落ち着け、お前らいったん席に着け」
担任の
しばらくすると、校内放送で先生方の召集があった。
「担任の先生方は職員室に集まって下さい、生徒達は教室で待機して下さい」
「お前ら、ジッとしてろよ。とりあえずテレビをつけて、何か新しい発表が無いか見てろ」
墨田先生はそう言い残すと、廊下へと消えていく。
残された僕らは、そのまま国営放送のテレビを見続ける。
テレビを見ていると、特別番組が始まった。
国営放送のニュースのスタジオから、好感度が高い
「先ほどの『第18回目の改善政策』で、4日後にテストがされるとの発表がありました。このテストは宇宙人の
今、政府では対策の為の会議が行なわれています、こちらをご覧下さい」
TVRが切り替わると、国会の会議室に入る総理大臣と他の大臣達が映し出された。
今回の会議は特別らしい、与党だけではなく、野党の代表の議員も何人かその部屋に入っていく。
一通り、入場シーンが放送されると、カメラはスタジオに戻る。
するとそこには春藤アナウンサーの他に、専門家がいた。どうやらどこかの大学の教授らしい。
春藤アナウンサーは、この専門家に意見を聞く。
「今回の宇宙人の発表を受け、政府はどのような対応を取るのでしょうか?」
「おそらく『
「……ええ、私も何となくそれは分かります」
春藤アナウンサーがあきれた顔をする。うん、僕もそこまでは予想がつく。
重要なのはその先の出来事だ。詳しい見解を専門家から聞き出す。
「ええと、政府が『遺憾の意』を出した後はどうなるんでしょう?」
「そうですね。宇宙人側に何かしらの抗議はするでしょうが、おそらくその抗議は受け入れられないでしょう。今まで宇宙人の出した政策は、全て実施されています」
「たしかに。いくつかの改善政策はクレームを受けて修正はされましたが、政策そのものの
「はい、この政策は中断される事はないでしょう」
「なるほど、テストは避けられませんか」
「ええ、ですので我々の政府が出来るのは、せいぜい実施されるテストへの対策ですね。テストまでの期間が4日ほど。先ほど出された例題からすると、出題レベルは低そうなので何とかなるでしょう」
「そうですね、宇宙人は『勉強しなくて良い』とまで言っていましたからね」
「心配でしたら、中学生用の参考書や問題集で軽く復習をしておけば良いんじゃないでしょうか」
確かに問題は簡単そうだが、宇宙人のやる事に油断は出来ない。もしかしたらテストに何かとんでもない罠があるかもしれない。
僕が警戒しながらテレビを見ていると、国会の方で動きがあったようだ。
『ただいまから、総理大臣の発表があります』
緊急放送の見出しが出て、画面が切り替わる。
会議室の扉の前で、総理大臣が書類を片手に政府の方針を発表する。
「この度の改善政策には、政府から断固たる抗議を行ないます。
抗議を行ないますが、このテストを阻止する事はできないかもしれません。
そこで政府はテストの勉強の為の支援を行ないます」
「どのような支援が行なわれるのですか?」
代表の記者が質問をすると、総理大臣が丁寧に答える。
「公共機関での学習支援ですね。公民館や、今回はテストを受けないで済む小学校と中学校を休校にして、一般向けの方々に解放をして講習を行ないます。
市役所などでは講習は出来ませんが、模擬問題を配ります。また、模擬問題は政府のホームページなどで配布しますので、ご活用下さい。
他には新聞などでも模擬問題を載せてもらう予定です。こちらは民間協力なので強制は出来ませんが、出来る限りの協力をお願いしたいですね」
「なるほど、緊急事態なので、我々も出来る限りお力添えをします」
「助かります。時間はあまり残されていませんが、みなさん頑張りましょう」
ここで一端、国会からの中継は終わった。
カメラはスタジオに戻り、春藤アナウンサーと専門家は、今後の細かな予定について話している。
ここで僕は政府の対応にちょっと感心をした。
以前の政府だったら、足の引っ張り合いなどで結論が出なかったが、今はスムーズに政策が実施されている。
最近は宇宙人に引っ張り回されて、対応力が鍛えられたのだろう。
政府発表の後も、僕らはテレビから情報を得ようと見続ける。
だが、専門家から具体的な事は何も出てこなく、ニュースは同じような事を繰り返し言い始めた。
すると誰かがこう言った。
「テレビ
興味本位でチャンネルを変えてみると、緊急のテロップは出ているものの、そこには海外ドラマの銃撃戦が映し出された。
非常事態に、このテレビ局の経営者は……
一度、宇宙人に頭をイジってもらった方がよさそうだ。
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