犯罪と捜査システム 4

 ハンバーガーチェーンに付き、席を確保する。

 僕らは席に着き、ジミ子がスマフォを覗くと「うわぁ」と声を上げた。


「どうしたの?」


 ミサキがジミ子のスマフォを覗きながら、その訳を教えてもらう。


「いや、臨時速報の逮捕者がね。凄いよ」


 その言葉を聞いて、僕もスマフォを見てみると、たしかに凄い。

 1画面には収まらずスクロールさせても、なかなか終わりが出てこない。全部で100件くらいはありそうだ。


 ここへの移動中、バイブ設定のスマフォが震えまくっていたが、こういう理由だったのか……



 ここで僕は当初の理由を思い出した。

 たしかこの話は『オレオレ詐欺』の摘発てきはつから始まったんだ。

 僕は関連する記事を見つけようとするが、あまりに数が多く見つけられない。


「そういえば、オレオレ詐欺とかのニュースはある?」


 仕方ないのでみんなの力を借りる。すると、キングがすぐに見つけてくれた。


「あったぜ、オレオレscamスキーム。摘発者は143人……

 容疑者の名簿が載ってるが、見たければ自分で見てくれ」


 そういってLnieでURLを投げてくれた。

 やや投げやりな気もしたが、記事を見ると納得できる。

 ひたすら容疑者の名前と被害額、詐欺の役割などの情報が続いており、これを読み上げるだけでも苦痛だろう。


 この詐欺を行なっている詐欺師は何人いるか分からないが、ほぼ全滅したと思われる。

 これから被害者が出なくなると思うと、この改善政策はやって良かったと言えるだろう。



 逮捕者の記事のリストを見ていたヤン太が少し切れ気味に言う。


「ああ、もう多すぎて訳が分からん」


 そういうと、ジミ子が新たな観点かんてんから、犯罪者のリストを確認する方法を思いついた。


「警視庁とかさ、指名手配犯のリストが載ってるじゃない? どれくらい逮捕されたのか確認してみれば」


「なるほど、さすがだぜ。ちょっと見てみるか」


 そう言ってヤン太がスマフォを見ると、そこには驚愕きょうがくの事実が載っていた。


『ほとんどの犯罪者は逮捕されました。ご協力に感謝します』


 との注意書きがされていて。

 リストに載っている犯罪者の写真には『逮捕されました。ご協力ありがとうございます』という文字か『ただいま確認中です』のどちらかしか居ない。


 僕らが驚いていると、キングが更なる情報を引き出してくれた。


「指名手配犯は、ほぼ捕まったか、確認…… まあ、死体を確認してる段階にあるらしい。

 一部、見つからない犯人もいるそうだが、宇宙人の監視システムによると、生きている確率は限りなくZeroゼロに近く、死体が火葬されているか、既に朽ち果てていて確認できないだけらしい」


「ああ、うん、そうなんだ」


 ミサキが少しあきれたような返事を返した。

 宇宙人の監視システムは凄いと思っていたが、ここまでとは思わなかった。

 おそらく全人類を完璧に把握しているのだろう。



 僕らがこの指名手配犯のリストを眺めていると、ジミ子が騒ぎ出す。


「大物だ、現役大臣らの『政治資金の不正流用』が発覚だって、速報ニュースが来たよ」


 スマフォの臨時ニュースのリストを見てみると、最新のニュースにその記事があった。


 僕はそのニュースを覗いてみる。すると



『政治資金の不正流用リスト』と表題があり、現役大臣を含み与党と野党の国会議員の名前が連なっている。

 与党の議員は、現役大臣、大臣経験者。野党の議員は、党首、副党首、役職経験者なども含まれており政治にうとい僕でも何人かは知っていた。


 その人数は、与党議員の6分の1、野党の議員の4分の1。

 リストには金額と詳細な資金の迂回方法があり、一部は故意ではなさそうだが、ほとんどは意図的にやっていそうな内容だった。


 当然、この事により国会は中断される。


 ネットニュースの動画を見てみると、


 野党の議員が『あの大臣の任命責任をとれ』というと、与党の議員は『お前のところの党首はどうなんだ、先に辞めろ』と話にならず、大混乱だ。


 宇宙人のシステムは犯罪者の摘発に留まらず、新たな犯罪を洗い出しにも使えるらしい。

 しかし、これはえらい事になったかもしれない。



 ここからは新たな犯罪のニュースが続いた。


 その内容は『芸能人の不倫』といったゴシップに近いものから、社会的地位の高い『大企業の脱税』、さらには『公務員と企業の癒着』といった新聞の一面を飾りそうな大きな事件まで。


 その件数の多さと範囲の広さに、僕らはニュースを追うのをやめてしまった。

 話題を切り替え、適当な時間をマンガの話をして、その日は解散となった。



 家に帰ると、母さんがテレビを見ていて、僕にこう言ってきた。


「大変な事になっているわよ。お隣の国でも役人の検挙者が大勢出た見たい」


 テレビは今まさにそのニュースをやっていた。


 ニュースを見ていると、映画のエンドロールのような小さな名前のリストが延々と続く。

 そして3分ほど経ったあと、終わったと思ったら『続きはWebで』と出てきた。どうやら制限時間でも表示し切れなかったらしい。

 いったいどれほどの違反者がいるのだろうか……



 僕の何気ない一言から始まったこの日の出来事は、後に『粛正の日』として教科書に載る事となった。

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