第五十七話 錬金術

「今のってスキルで何か調べたの?」

「うん。これ盗聴器だって。音を盗み聞きする機械みたい。そして、その持ち主が隣のクラスの女子だったんだけど、どうもそれが、女神候補かもしれないんだ」

「女神………。また増えるの?」

「僕は女子と知り合ったら誰でも連れてくるわけじゃないからね!」


失礼だな!

最近では二連続で連れて来てるから仕方ないけどさ。


「あ、出来た。ああ、ええっと、その、なんと言いますか、、、、」

「はいはい。何かスキルが出来上がったんでしょ?部屋に行っていいわよ?ご飯までには降りてくるのよ?」

「う、うん。ごめんね?ちょっ、ちょっと行ってくる!」


いやほら、早くアニカを元に戻してあげないとね、いけないからね。

あう、フィアの視線が痛い!


逃げるように自室に戻る。

さて、気持ちを切り替えて!

錬金術かぁ。

とにかく起動してみよう。


「錬金術!」


錬金術modへようこそ


錬金術レシピを見る

錬金術を実施する



なるほど、レシピを探して、それを実行すると何かが出来上がるわけだ。

錬金術レシピを見てみよう。


錬金術レシピ


[       ]♪


音声で入力してください。


[検索] [戻る]



ああ、スキル作成と同じ感じね。

と、ここに色々入れて見たけど、見つからない。

何か手掛かりが無いと分からないな。

どうしよう。


し、仕方ない、、、。下でアニカに聞くか。


「えっと、お忙しい中すみません、、、。アニカさんに聞きたい事がありまして、、、」

「何、怯えてるのよ。行き詰まったんでしょ?アニカ、ご主人が何か聞きたいんだって」

「ハイハイ!何でも聞いてくだサイ!」


うぅ、フィアに睨まれてる。

後でスキルレベル5全開にした料理を振る舞うから許して。


「ダミーさん化された時に何か名前みたいなのを聞かなかった?起動する時とかに名前をコールすると思うんだ」

「名前、、、デスカ。何か言ってマシタカネ〜」

「そこを何とか!手掛かりが欲しいんだ!」

「オウ、人形がドーノコーノと言ってマシタ。人形のナントカを作るのお金が掛かってタイヘンだったって泣いてマシタ」


悪事をするにもお金が掛かるんだね。

人形か。

入れてみるか。


「にんぎょう」


「にんぎょう」検索結果 4件


人形使いの鞭 小型4級魔道具

人形化の宝珠 中型特級魔道具

精霊の人形 大型2種神器

天使の人形 大型1種神器


この人形化の宝珠っていうのが怪しいな。

その下のが凄く気になるけど。気になるけど!

今は我慢だ。



人形化の宝珠


人族を人形族にコンバートする。

コンバートされた人形族は、生命力、マナ力を持ち、それまで同様、自由にログイン、ログアウトが可能となる。

参考:人化の宝珠、獣化の宝珠、石化の宝珠


[レシピを見る]



これで合ってるみたいだ。

そして、参考欄に書いてある、人化の宝珠!これでアニカを人族に戻せるんじゃないか?

あ、この石化の宝珠って、石になって固まるっていう意味じゃなくて、エルツ族になるとかだったりして。

ああ、いかん、すぐ他の面白そうな事に目がいってしまう。



人化の宝珠


人形族、または、エルツ族、獣人族を人族にコンバートする。

コンバートにより人族になると、それまでの種族による機能は半分になる。


参考:人形化の宝珠、獣化の宝珠、石化の宝珠


[レシピを見る]



さっきは人族からしか、人形族に出来なかったのに、今度のは色んな種族からコンバートできるんだな。

人族が真ん中で、それぞれの種族に枝分かれしてるのかな?

エルツ族から人形族にするには一度、人族にしないといけないとか。

というか、そもそも人形族って何だよ。

ダミーさんって種族の一つだったのかよ!


それと、精霊って人族でいいのか?

中身が精霊でアバター?が人族でいいのかな。


ああもう、色々検討したい事が山程出てきてるけど、全部我慢して、レシピを見てみよう。



人化の宝珠 レシピ


材料 1個分

レッシェギフトの根 1株

雄黄ネズミの皮膚 1カケラ

スターリングシルバーオオトカゲの皮 一匹分

金剛石 5粒

軽銀 小さじ1杯

畑の肥料 カップ1杯

卵 3個

塩 少々

水 桶1杯


作り方


1 レッシェギフトの根をお湯でさっとゆがきます。


2 雄黄ネズミの皮膚を陽の光に当てないようにしながら、粉状になるまで砕きます。


3 1と2とその他の材料をすべて釜の中に入れます。


4 ステータスウィンドウから錬金術modの「錬金術を実施する」を選択して、対象を材料の入った釜にします。


5 45分程でできあがり。


ポイント

雄黄ネズミの皮膚は陽に当たるとガスがでて危険です。

暗くしてから砕きましょう。


作ってみましたレポート

このレシピを見ながら作ったら簡単に出来ました。

また作ってみます。



………な、なるほど。

魔物の材料はストレージに残っていた筈だ。

あ、スタシルトカゲはそんなにないや。

ライヒェン銀貨で代用できるかな。

畑の肥料とか卵、塩は何とかなりそうだ。

塩って高そうだな。

後は、金剛石と軽銀か。

金剛石って、エルツ族のディア王女の名前になっている宝石だよな。

宝石屋さんに行けば売ってるかな。

こっちの方が塩より高いかも。

残りは軽銀か。

なんだろうこれ。

レシピがあったりして。



軽銀 レシピ


材料 1掴み分

ギブサイト 大1個


その他の道具など

ラウゲン液 適量

クリオライト 適量

炭 適量

水 適量

銅線 適宜

溶岩程度の温度に耐えられる容器


・・・



あったよ………。

何かを作るのに、その材料になるのを更に作らないといけないのか。

まずはこっちからだな。

ラウゲン液はパン作りや掃除でも使うから、何処かの道具屋に売ってるだろう。

ギブサイトとクリオライトは宝石屋かな。


「あ、えと、ちょっと買い物に行って来ます………」

「うん、行ってらっしゃい。大丈夫?付いて行こうか?」

「大丈夫、大丈夫!一人で買い物出来るから」

「小さな子供が初めておつかいに行くみたいね」

「おつかい言うな」


もう、すぐ小さい子扱いするんだから。

まあ、人口比でも下から数えた方が早くなっちゃったけどさ。


まずは、畑の肥料とか卵とか買いやすいものは揃えてしまう。

後は金剛石とギブサイト、クリオライトだ。

というか、軽銀も売ってれば、その分簡単になるから探してみよう。


宝石とか石の類を扱っているお店に入る。


「すみませ〜ん」

「はいよ。おや、ここは宝石屋だよ?何処かと間違えたかね」

「あ、いえ、おつかい、、、じゃなくて、買いたい物があるんです」


ラナがおつかいとか言うから間違えちゃったじゃないか。


「ほうほう、まだ小さいのに偉いね。何が欲しいんだね」


まあ、話がスムーズに言ったからむしろ良かったか。

さすがラナ。


結局、このお店で欲しい物は皆んな揃った。

金剛石はとても高かったし、軽銀は無かったけど。

どうやら軽銀というのは、自然にはあまり産出しない物らしい。

ギブサイトから加工するにもお金が掛かるので、誰も作る事も無いのだそうだ。

溶岩にも耐えられる耐火性のレンガも大量に買って家に帰ってきた。


家の裏庭でまずは軽銀を作ってみよう。


・作り方1

ギブサイトを砕き、ラウゲン液に浸します。


よし、桶にラウゲン液をドバドバ入れて、ギベオンソードでスパスパ砕いたギブサイトをそこに入れていく。


おお、なんか溶けて来た。


・作り方2

溶液をろ過し、ろ液を大量の水で薄めます。

すると、下に沈殿物が溜まるので、取り出します。


ギブサイトが溶けている液体を紙に通して、濾していく。

下に落ちた、ろ過された液体を大きな桶に入れる。


「メールの水塊」


ドボドボドボ


大量の水は魔法で出せるから楽だ。

しばらく待つと、下に何か溜まってるな。

水を全てこぼすと少し銀色っぽい塊が出来ている。


・作り方3

それを強熱します。


まあ、熱すればいいんだろう。


「ファッケルの火」


弱めにした火で炙っていく。

カラカラに乾いて粒状になる。


「何を作ってるの?ご主人」


皆んなが見に来ていた。

何だよ、さっきまで興味無かったくせに。

あ、そうだ。この粒を少しだけ取っておこう。


・作り方4

耐火性のレンガで器を作り、クリオライトを入れて加熱溶解します。

溶けたら、そこに3で出来たものを入れます。


ファッケルの火で加熱しながらクリオライトを入れていく。

溶岩程度の温度になるとクリオライトが溶け始める。

そこに作り方3で出来た銀色の粒を入れていく。

するとその粒も溶けていき、全て液体になった。


・作り方5

炭に銅線を挿したものを二つ作り、液体の端と端に入れます。

銅線同士は繋いで、加熱しながら、電流を流します。


電流を流すと言うのが分からなかったけど、どうやら真実の書によると雷魔法でいいらしい。


ファッケルの火で加熱しながら、片方の手で銅線掴み、雷魔法を弱めに長く流していく。


「超弱く、ブリクスムの雷鳴」


銅線に雷が流れていくと、液体がしゅわしゅわと泡立ってくる。


これ本当に出来るの?

レシピに書かれている通りにやったけど、何をやってるのかさっぱりなんですけど。


しばらくしゅわしゅわしていると、液体の中にある炭が何故か片方だけどんどん小さくなっていく。

もう一方の炭は何も変化が無いけどその下に銀色のキラキラした物が積っている。

あれが軽銀なんだろう。

片方の炭が無くなりそうになると継ぎ足していく。

そして、加熱と弱い雷を流し続ける。


お、しゅわしゅわしなくなった。

作り終わったようだ。


この熱々の液体はどうしようかな。

捨てる訳にはいかないよな。


「ねぇ、ラナ。これどうしようか」

「もう。これだから作るだけで気が済んじゃう人は〜。片付ける人の身にもなってよね?」

「あうっ。すみません」


いかんな。ちょっと作る事に夢中になり過ぎて、色々考えが至っていない。


「ストレージがあるのではないの?」

「おお!フィアさすが!って液体は入るんだっけ」

「水で試してみるといいんじゃないですか?」

「あ、そうか、ありがと、リーカ」


ああ、頭が他の事に回らないな。

水を入れてみて問題ないのは確認出来た。

この液体も入れてみよう。

なんか怖いな。

入れたら熱くなったりしないかな。

とか心配したけど、問題なくストレージにこの熱々の液体を入れられた。


レンガで作った器の中には、炭と銀色の塊だけが残っていた。

まだ熱そうだな。


「メールの水塊」


水を掛けて冷やす。

ある程度冷えたら持ち上げてみる。

お、見た目よりずっと軽いな。

あ、だから軽銀か。


へぇ、柔らかいし、軽いし、面白い物だな。


「これがアニカを元に戻す物なの?」

「ううん。これはその材料だよ」

「え、、、あんなに大変そうだったのに、まだ材料作りだったの?」

「あ、うん、まあ、この後はそんなに難しくないと思うよ?さっきのは錬金術スキル使ってないしね」


この後は簡単そうだ。

材料の下ごしらえをして、全部釜に入れる。

後は錬金術modの「錬金術を実施する」を選ぶ。



錬金術mod 錬金術実行モード


どれを対象に錬金術しますか?


釜 人化の宝珠の材料入り



釜を選ぶと錬金術が実施されているようだ。

ようだ、というのも、釜の中を覗いても真っ黒になって見えなくなってしまったから、何が行われているのか全く分からない。

なんだかガチャンガチャン音はするんだけどな。

どんな原理なんだろう。


さっきの軽銀もこんな感じで楽に作れれば良かったのに。

あ、そうだ。


「フィア。これ、はい。あげる」

「捨てるなら自分で捨ててくれないかしら」

「捨てるの前提なの?!そうじゃなくて、これってフィアの宝石なんだよ。まあ、厳密には違うんだけどさ。これに少し違うものが混じると蒼玉、つまりザフィーアになるんだ。だからさ、これ折角だからあげようかなって。あ、要らないよね」

「………いいえ。頂くわ………。これがわたしの宝石」

「あ、本当はもっと綺麗な蒼で、キラキラしてるんだけどさ。これは、その、フィアの芯の部分なのかなって」

「……そう………その、、、、ありがと」

「う、うん!どういたしまして!」


ああ、なんだか、作って良かった!

あの恥ずかしそうに微笑んだ顔を見れただけで、もう満足だよ!

良かった良かった。

この為に頑張った努力が報われたよ。

あ、違った、アニカの為にやってたんだ。

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