48 突然始まるのが女子会
「さて、エイリー。私からも話があるんだけどいいかしら?」
ブライアンが部屋から出ていくと、私の方を見て、にっこりと微笑むミリッツェア。笑顔が真っ黒い。
怖い、怖い。怖いんだけど、ミリッツェア?!
「……私は話したいことないかなっ!」
そろそろ帰りたいなー的なニュアンスで言ったのに、ミリッツェアに、
「なら、次は私の番ね?」
と、一蹴されてしまう。
恐るべし、ヒロイン。流石、魔王に口喧嘩で勝っただけある。
「話ってナンデスカ」
「なんで片言なのかしら?」
「ミリッツェアが怖いからだよ?!」
自覚を持とうよ、自覚を!
貴女、自分が思ってるより怖いんだからね?!
「心外ね」とか言っちゃってますけどね、事実だからね?!
「……ねえ、エイリー」
「ひえええええええ」
「……貴女にそんなに怖がられるのって、なんか複雑だわ。貴女の方がよっぽど怖い」
「異議あり! ミリッツェアの方が断然怖い!」
真顔で冗談のようなことを言ってくるもんだから(私は冗談だと信じたい)、私は即座に否定する。
「シェミーもそう思うよね?!」
そして、すかさず次の手を放つ!
「この流れで私に同意を求めてくるの……?」
シェミーは何やらぶつぶつと呟いているようだけど、そんなの気にしない!
シェミーだって、絶対、ミリッツェアのことを怖いと思ってるはずだ。私とミリッツェアじゃ、過ごしてる時間が違うし!
これは勝ったな! 勝っちゃったな!
「シェミー、流されちゃだめよ。エイリーの方が怖いと思ってるんでしょ?」
「ええ、ミリッツェアも乗ってくるの?」
ミリッツェアも私の攻撃を真似してくるが、痛くもかゆくもない。
だって、シェミーは私の味方だからだ!
「シェミー、正直に言ってごらん?」
「そうよ、遠慮することないわ」
「「どっちなの?!」
不覚にもミリッツェアとハモってしまうが、聞きたいことが一緒だったので仕方ない。
「ふたりとも、勢いがすごいよ……」
と、シェミーはため息を吐くと一言。
「正直に言うと、どっちもどっちかな」
「「なんで?!」」
「そういうところだよ……」
遂には、はははと乾いた笑いを浮べている。
おのれ、ミリッツェアめ……!
「そんなことより、話が脱線してるけど」
「あ、そうだったわね。エイリーと話してると、どうも話が遠回りするのよね」
シェミーの指摘に、ミリッツェアがはっとした表情を浮べる。
「全部私のせい?!」
「ごめん、エイリー。これは否定できない」
「なんですと?!」
話が脱線するのは、私のせいなの?!
確かに話を脱線させてるような気もしなくもないけど、全部が全部私のせいってわけじゃあないでしょ! 失礼な!
「……話を戻すわね。こういうくだらない話をしてたら、本題までどうでもよく思えてきちゃうじゃない」
「じゃあ、話さなくてよくない? お開きにしましょ?」
「ダメよ」
流れで終わりにしてやろうと思ったのに、ミリッツェアはひっかからなかった。手強いな……。
普通に忘れてくれて、いいんだけど。そっちの方が私的にありがたいんだけど。
「……話って?」
できれば聞きたくないけど、今だって聞きたくないけど、ミリッツェアは引き下がることはないので、仕方なく私から聞く。
手っ取り早く終わらせてくださいっ!
「エイリー。ブライアン様が浮気相手ってどういうことかしら?」
「はへ?」
「さっき、言ってたじゃない。ブライアン様と浮気するって」
「あの~、ミリッツェアさん?」
若干、話がねじ曲げられてるような……。
「エイリー、貴女、ブライアン様に恋心は抱いていないんじゃなかったの?!」
「これっぽっちも抱いてないけど?! むしろ、嫌いだけど?!」
「じゃあ、なんでブライアン様を浮気相手に選ぶのかしら?!」
「男の人で知り合いが、ブライアンくらいしか思いつかなかったからだけど?!」
言わせんなよ。こっちが悲しくなってくるでしょ。
どうせボッチですよーだ。いいもんね、ボッチそれなりに楽しいんだから! くそっ!
というか、どうして、こんなに面倒くさい女になってしまったんだ?
これっぽちもそんな仕草見せなかったじゃん。
いきなりすぎて、ついていけないんですけど……?
「……ぷ、ふふふ、ははははははっ! あー、可笑しい」
私が頭の中にクエスチョンマークを浮べていると、ミリッツェアがいきなり笑い出した。遂に狂ったか。
「ごめんなさいっ! 笑うつもり、なかったんだけど、ははは、エイリーがあまりにも必死なもんだったから、つい……」
「あらぬ疑いを晴らそうとして、何が悪いかな?」
「ごめんなさい。本当にごめんなさい。可笑しくて、可笑しくてっ!」
そう言いながら、今度は涙を流し始めた。
……情緒不安定? ヒロイン、ヤンデレ属性持ってたっけ?
「とりあえず、笑うか、泣くか、怒るか、謝るか、どれかにしたら?」
「はは、本当にそう思うわ……」
「落ち着くまで、待ってるから」
「……っ! 本当、そういうところよ」
「何が?」
「エイリー、そういうところだよ」
「本人、全くわかってないんだけど??」
ミリッツェアが意味不明な発言をしたが、その言葉の意味をシェミーはわかっているようだった。
わかってないの、私だけ? なんで?
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