118 踊る戦乙女たちの女子会、スタート
3人の可愛い女の子たちに掃除をしてくれ、家は綺麗に片付けられた。
どのくらいかと言うと、久しぶりに見る床がきらきら光って見えるくらいだ。比喩ではない。
おかしいなぁ。うちの床、普通の木なんだけど?
彼女たちの掃除技術というか、掃除にかける情熱は凄い。個人の技術もすごいが、連携プレーも中々だった。あんまり接点ないのに、どうしてあそこまで息ぴったりなのか。驚きを隠せない。
……どうして私がこんなに詳しく、3人の掃除の感想が言えるのか、というと。
そんなのは決まっている。
私が『手伝おうか?』と一応言うんだけど、3人に、『大丈夫、エイリーは座って見てて。何もしないで』と見事に振られてしまった。(しかもそれは息ぴったり3人同時に言ったのだった)。
だから、私は大人しく3人の掃除の様子を観察してたのだった。寝なかった私、偉い!
まあ、とにかく家が綺麗になったので、私たちは床に丸くなって座り、本題に入った。
「で、何しにきたの?」
これが、ようやく聞ける。私の家来ると皆片付けたくなるらしく、用事を聞くまでにかなり時間がかかる。別に散らかってても話くらいはできるじゃんね?
「何しにきたって決まってるでしょ!」
ねえ、とグリーがシェミーとゼノビィアに問いかけると、彼女たちはうんうんと頷く。
「決まって、るの?」
私、全然心当たりないんですけど?! 3人で通じ合うのやめてくれない? 私、ハブられてるみたいじゃん?!
「当たり前よ」
「で、それって何?」
「女子会よ!」
「……は?」
「じょ・し・か・い!」
「……え? ……は? はああああ?!」
女子会? 女子会だと?!
この世界にもそんな概念あったんだ……。知らなかった……。どこの世界でも女子は女子会したがるのね……。
「女子会よ。もしかして、知らないの?」
「失礼なっ! 流石に知ってるよ!」
「本当に?」
「本当だよ! 女子たちが集まってきゃっきゃうふふする会でしょ?」
「何か微妙にずれてる気がするけど、まあそんな感じね」
「急にどうして?」
「それこそ決まってるじゃない!」
「それこそ意味わからないんだけど」
唐突に女子会って言われても、私が困るだけなんですけど?
てか、どうして私の家でやるわけ?
「エイリーの恋バナ聞くための女子会よ!」
「はああああああああ?!」
え、嘘、ちょっと待って?! ねえ、待って?!
なんでそこで私が出てくるの?! おかしいよね?! なんで私の恋バナ?!
「聞いたよ、エイリー。婚約したのに、想い人は別にいるんでしょ?」
「エイリーもなかなかやるねぇ」
と、シェミーとゼノビィアも興味津々に迫ってくる。
私、誰にも何も言ってないのに?! どうして、こんなことになってるの?!
……まあ、元凶はわかりきっているが。
「グリーっ!」
「どうしたの?」
涼しい笑顔で、グリーは微笑んだ。その笑顔に悪意(?)が込められていたことを私は見逃さなかった。
こんちくしょう、あとで覚えてろよ……!
「……女子会、本当にするの?」
「「「勿論」」」」
「別に大した話ないよ?」
「「「そんなことないでしょ」」」
こいつら、今日はやけに息ぴったりだな。練習してきたのか?!、と言いたくなってしまう程だ。仲良くて羨ましくなるぞ、こんちくしょう!
「……なんでそんなにやりたいの?」
この質問にズバリとゼノビィアが答える。
「エイリーの恋バナを聞きたいから」
「別に他の人の恋バナでもよくない? ゼノビィア、あんた恋バナなんて聞き飽きてるんじゃないの?」
ゼノビィアは友人が多いから、絶対恋バナも私の何十倍も聞いてるはずだ。ぶっちゃけ飽きててもおかしくない。
「確かに聞き飽きてるけど……」
聞き飽きてるんかーい。
「エイリーの恋バナは別でしょ」
「なんで?!」
「あんたが恋するなんて思ってもなかったから? ……ギャップって言うの? それが面白いんじゃん」
「はあ……?」
よくわからん。私と他人の恋バナって何か違うの?
そりゃあ、話の中身は違うんだろうけどさ、根本的な雰囲気(?)的なものから違うの?
「ゼノビィアの言う通り。エイリーの恋バナを聞ける日が来るなんて、夢にも思わなかった!」
純粋なキラキラした目で見つめてくる、シェミー。なんだこの、魅了するような表情は。可愛いんだけど。
「と、言うわけよ。では始めましょう!」
「ちょい待て」
「まだ何か文句あるの? 最高級の茶葉は用意したわよ?」
「私も、お菓子作って来たし」
「帰りは遅くなるって、伝えて来たし。もしかしたら、泊まるかもっても」
グリーが、シェミーが、ゼノビィアが、それぞれ言う。
こいつら、ここまで準備万端なのか……。なんなんだよ、このやる気……。
「なんの問題もないわね」
大ありですけど?
でも、そんなことを言うのもめんどくさくなってしまう。
こいつらの熱気の前では無力だ……。
「じゃあ、はじめましょうか!」
グリーのノリノリな開始と共に女子会はスタートするのだった。
……私、まだ話すなんて一言も言ってないんだけどね?
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