20 事情なんて聞き出すもんでしょ
晴れて、アイオーンの3番目の王子と2番目の姫と騎士団長に、友達認定をされた私。
いえーい?
これ、喜んでいいのか? なんか素直に喜べないんだけど。
そんな不思議な気分に浸っていると、私は本当に大切なことを思い出した。
彼らの流れに流されて、すっかり忘れていた……。彼らの勢いは凄すぎる。
「ねえ、何でこんなところにいるのさ?」
一番初めに思った疑問。
騎士団長はまだしも、一国の王子と姫が簡単にこんなところにいちゃ駄目だろ。この森は、最近危険度が急上昇中なのだから。
「えーと、その」
ぎくり、とわかりやすく顔に出す、ファースたち。目線をそらしてるし、かなり怪しい。怪しい以外の何物でもない。
まあ、お忍びだろうし、何か事情があるのは重々承知だ。
でも聞きたい。だから聞きたい。
それが私だ。
「あのね、この森は今、魔物が謎に大量発生してて、危険度が増してるの。もしかしなくても、知らなかった?」
え、と彼らは驚きの色を見せた。やっぱり知らなかったんだ。だよね、そうじゃないとこんなところに来ないよね。
外の情報、というか、冒険者間で出回ってる情報に、彼らが疎いのは当たり前と言ったら当たり前なんだけど。
だってこの世界、インターネットもスマホもないし。
王族と騎士団長、それぞれ忙しいし、なかなか情報も入ってこないよね。
それに、危険度が増したのは本当に最近のことだし。
もともとこの森は、安全な方で、初心者にはもってこいの魔物狩りのスポットだった。だけど、最近ここには、本来いないはずの中級の魔物が出現し始めた。
初心者の冒険者が被害にあって、そのことが発覚した。死人も出てるらしい。
可哀想だと思うが、そうは言ってられない。冒険者をやる以上、命の危険はまとわりつく。
そんなことがあって、冒険者省は早急に対策をするために、私に依頼した。というか、押し付けられた。
本当に、私はいいように使われてる気がするんだよなぁ。まあ、こんなの放っておけないしね。
「だから私としては、あんたたちがここにいることが不思議なわけ。理由があるんでしょ? 教えてよ」
秘密だろうが、何だろうが話は聞き出す。これが私のスタイルだ。
事情は知ってるけど、そんなの関係ない。だって、私は知りたいんだ。
「……わかったわ。でも、広めないでくれると嬉しいわ」
「善処する」
私が折れないことを感じ取ったのか、グリーは話す決意をしたようだ。それは、ファースもレノも同じみたい。
いい判断するね。好感が持てるよ。
「ここに、マスグレイブ家に伝わる秘宝があると聞いたのよ。それを探しに、私たちはこの森に来たの」
秘宝だからあまり多くの人に知られたらまずいでしょう? と、グリーは困った顔で言った。
…………ちょいと待て。
なんだって?ここにあるのは、マスグレイブ家に伝わる秘宝だと?!
マスグレイブ家に伝わる秘宝、そう言ったよね?! 王権を巡って探されてる、あの?! てことは、ファースやグリーも、実は王権を狙ってたわけ?!
なんか凄いわ、この国の王族さん達。
「てことは、ファースもグリーも、実は王様になりたい願望があるわけ?」
隠しても仕方ない。私は端的に質問をした。
「断じて違うっ! 兄上達の争いを見ていて、俺はお腹がいっぱいだ!」
「そうよ! なりたいと言ったら、お兄様やお姉様に殺されるわっ!」
その質問に対し、物凄い勢いで首を横に振りながら、ファースとグリーは否定してきた。 首が千切れそうな勢いだ。
うわー、必死だなぁと思いながらも、あの3人ならやりかねないなぁ、なんて思った。
「というか、なんでそのことをエイリーが知っているんだ?」
唯一、焦りを感じないレノは、そんな疑問を冷静に抱いたようだ。そういえば、とファースもグリーも気がついたようだ。
良かった、それスルーされたらどうしようかと思ったよ……。
「私、国王様から依頼を受けたの。王家に伝わる宝石を探せ、ってね。まあ、今回ここに来たのは無関係なんだけど。というか、ここにあるって知らなかったし」
「そういうことか」
そういうことだ。
ていうか、もしもここに秘宝があったらラッキーじゃん! 冒険者省で受けた依頼も、国王様から受けた依頼もどっちもいっぺんに片付けられる。
……まあ、そう簡単にいかないのが現実なんだけど。
「ま、ファースもグリーも王権を狙ってるわけじゃなさそうだし、友達として、友達として、協力しない?」
“友達”という単語を、これでもかってほどに強調する私。
それにどうせ、彼らは巻き込まれただけなのだろう、王権を巡った戦いに。
国王の実の子供なのだから仕方ないんだけどさ。理不尽だよね、可哀想。
「……いいのか?」
「私なんも情報持ってないから、協力して欲しいし」
ファースの質問に、私は本心で答えた。
そもそも私は、情報収集がうまくいってないのだ。1番情報を持ってそうな友人がいるのだから、使わない手はないだろう。
「よろしく頼む」
「よろしくね」
うまくのって来てくれた彼らに、私は笑顔で、
「こちらこそ」
と答えるのだった。
よし、これでがっぽがっぽだ!
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