第67話 儀式 2

 ブンブンブン。音が大きくなる。

 音の振動がピリピリと肌をなでていく。

 ぶんぶんと音が空から、いや、地面から響いてくる。


 ブンブンブン。

 あたりを音が支配する。


 空気がのしかかるように重く、肌がピリピリして、髪は静電気を近づけたように、逆立った。ミコちゃんは前髪がめくれあがって、おでこがのぞき、耳の横で結んでいた髪は、怒ったときのネコのしっぽのように、フサフサと大きく広がっている。


 ケイゾーやノゾムくんは短髪だから変化は少なかったけど、それでもツンツンとトゲみたいに立っている。


 自分じゃ見えないけど、たぶん、あたしが一番サイコーな髪型になっていると思う。ショートだし、髪の毛の引っぱられ具合で予想するに、ぼわんとかなり大きく広がっているはずだ。


 それでも誰も笑っていない。

 それだけ必死で、体力の限界が近いんだ。


 ムキになって、うでをふっているけど、すぐにでも空を見ながら、そのまま、うしろに倒れてしまいそうだ。ブンブン音がじゅうまんしていて、耳の奥が痛い。


 地球パカーンはマズいけど、その前に、あたしのうでが、もげそうだ。

 ノゾムくんなんて、あれ、もう意識とんでるんじゃないの?

 いくら地球を救うためとはいえ、これじゃ、虐待だよぉ。


 ひえーっと、ぶっ倒れそうになったとき、よし子のおなかの下が、ぼんやりと光り始めた。


「呪文を!」


 ウバの声。

 あたしたちは叫んだ。


「スヤスヤネムレ、スヤスヤネムレ!」


 ブンブンブン。

 音がはげしく、高くなっていく。

 ブンブンブン。


「スヤスヤネムレ、スヤスヤネムレ!」


 声をはり上げる。のどがヒリヒリするし、うではパンパンだ。それでも、やめるわけにはいかない。誰よりもかん高いノゾムくんの声が、重なり合った音の中でも、ちゃんとききとれた。負けじと声をはる。


「スヤスヤネムレ、スヤスヤネム!」


 パリパリとそれまでとはべつの音がした。

 ぴょんとよし子が、地面をける。光は強さを増していく。


「あと少しだ……、もう少し」


 ウバは光り出した地面に手をあてると、また、ぶつぶつと呪文と唱えた。すると、ピシピシと音がして、地面にひびが入る。


「うではそのままふり続けて。ゆっくりとこちらに歩いて来てくれ」


 ウバが顔をあげて、あたしたちを呼ぶ。

 ミコちゃんと目を合わせた後、うなずいて、そろそろと前に進んだ。


「まだふり続けて。止めないように」

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