第65話 レッツ、カラむき ♪

「や、やっぱり、カラはないほうが、いい気がしてきたんだもん」

「じゃあ、割るの?」

「ごめーん、ミコちゃん。手伝って」


「かーっ、だいたい、なんでラッカセイなんだよ。ウバは大豆って言ってたじゃねーかよ」

「う、うるさいなー。ウバはこれでも大丈夫っていったもん。ねぇ?」


 ウバは苦笑している。

 はあ。

 あたしはしゃがみ、バキバキとラッカセイのカラを割っていった。

 ミコちゃんもかけよってきてくれて、残りのぶんを次々と割ってくれる。


「うす皮もむいちゃう?」

「そうだね。そのほうが大豆に近づくから」

「あー、たくっ」


 ケイゾーは悪態をつくと、「さっさと、やるぞ」と言って、あたしのとなりに座った。ラッカセイをつかむと、「おれがカラにヒビ入れてくから、おまえ、はずしていけよ」と指図する。


 えらそうにっ、て思ったけど、土壇場どたんばでストップかけたのはあたしだから、ぐっとこらえる。ノゾムくんも近づいてきて、「ぼくもやったげる」とミコちゃんのとなりに座った。


「おい、ノゾム。誰が食っていいつったよ。お供えもんだぞ。儀式に使うっていってんだろ」


「どくみだよ。どくみ」

「時代劇好きなの?」

「じいちゃんと見るんだよぉ」

「へー」

「あんず、こいつとしゃべってる場合か!」


 うっるさいなぁ。

 手は動かしてるでしょ。


「わたしも、手伝おうかな」

 ウバが顔をのぞかせる。

「あ、じゃあ、うす皮むいてください」

 ミコちゃんが赤茶色いラッカセイをわたす。

「うむ。わかった」


 バキッというカラを割る音に、クシャクシャとうす皮をむく音が重なる。

 円座になって作業して、やっと全部のラッカセイがピーナツに変身する。


「おお、大豆っぽいじゃん。やっぱカラむいて正解」

 喜んでいると、ケイゾーがすかさず、ぐさり。

「最初から大豆持って来いっての」


 だから、なかったんだよ!


 手の平をお椀型にして、みんなにラッカセイを入れてもらう。ちょっと量が減ってしまったけど、ウバは問題ないとうけあった。


「さて、ではもう一度」

 ウバは晴れやかに笑う。

「今度こそ、本番!」

 ケイゾーはほえると、あたしをじろっと見た。

「待ったなし、だぞ」


「わかってるよ!」

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