第63話 練習・練習・練習 2

「……じゅー、じゅういち、じゅーに」


「じゅうさんっ」

 くると中央を向く。

「どう? こんなカンジかな」


「こんなもんだろ。おい、ノゾム、今の感覚わすれんなよ。おまえ、ギリだぞ」

「兄ちゃんもね」


 けっ、とケイゾー。

 それを見て、ミコちゃんがくすくす笑っている。


「はぁ、つかれちゃったよ。何回練習した?」

 ひざに手をやって休むと、精霊が言った。

「おどろくべきことに、ちょうど十三回目の練習で成功だ」


「げっ、そんなにやったの。時間ないのにぃ」

 こんなことで、モタモタしてらんないよ。

「よし子、ごめーん」

 うとうとしていたよし子が目をぱちっとあける。

「コケッ」


「さーて、じゃあ、本番だな」

 ケイゾーはぐっとこしをうしろにそる。

「早くしねーと、夜になるぞ」


 いったん、あたしたちは精霊のもとまで戻った。というのも、練習中が長引いたので、それぞれにわたされたアイテムをあずけていたから。トゲトゲの枝やちゃぽちゃぽいってるボトルを持ってたんじゃ、集中できないからね。


「ああ、それから」と、アイテムを手に十字路の中央に向かっていたあたしたちに、精霊が声をかける。


「呪文があるんだ。アイテムを上下に大きく、動かしながら、それを唱えてほしい」

「どんな呪文だ?」

「簡単さ。『スヤスヤネムレ、スヤスヤネムレ』だよ」

「なんじゃそりゃ」


 ケイゾーが軽く笑う。

 あたしも、ちょっと笑ってしまった。


「地球卵はね、今、目覚めようとしているんだ。それをきみたちに、もう一度深い眠りにつかせてもらいたい」


「スヤスヤネムレ?」

「そう、スヤスヤネムレ」


 うーん、簡単だけど、それで効果があるのだろうか。

 精霊の姿が『よげんの書』から現れたのを見ているから、不思議なことも信じられるけど、そうじゃなければ、あやしい話だ。


「それで、地球は救えるんだな」

 ケイゾーが厳しい顔を精霊に向ける。精霊は重々しくうなずいた。

「そうだ。よし子は大人しく座っていてくれるだろうか?」


「よし子!」


 ケイゾーが鋭く声をかけると、自転車の周りでウロウロしていたよし子が、ぱっと顔を上げる。それから、「コッ」と一声鳴いたかと思うと、ゆうゆうとした足取りで、十字路の中央まで歩いて行った。


 それから、すっと卵を温めるように座る。

 ケイゾーは精霊のほうを自慢げに見やった。


「ほらな、ウバ。よし子はただのニワトリじゃねーんだ」

「うむ。素晴らしいな」

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