第47話 君たちに頼みたいこと 3

「か、簡単に言うけどな」ケイゾーが立ち上がって、精霊を見下ろす。

「信じられっか、そんなこと。子供だと思って、バカにしてんだろう」


 この、コスプレ野郎。

 ケイゾーが吐き捨てた言葉に、うっかり吹きだしてしまった。

 あわてて、せきでごまかすけど、ケイゾーはニヤリとした。


「だから、わたしは、わたしの言葉を信じてくれる相手を探していた」

 精霊があたしを見る。急に緊張してきた。

「あんず。きみがそうだ。わたしは間に合ったようだ」


 ぽっと体温があがった。嬉しいな。

 あたしが、えへへっと笑うと、ケイゾーが、ぐいと肩をつかんできた。


「ちょっと!」

 あたしを無視するケイゾー。おっかない顔をして精霊をにらみつけている。

「あんずを利用するつもりだな。そうはさせねーぞ」


「もう、あんた、何なのよ」


 面倒くさいヤツ。

 精霊は時間がないって言っているのに。


 なんだか精霊に申し訳なくなって、ケイゾーに、「もう帰れば」と言ってやった。するとカチンときたのか、「帰るもんか!」とうで組みして、どかりと腰をすえる。


「わたしも信じます」

 ミコちゃんがぽつりとつぶやく。顔をあげ、精霊をしっかりと見る。

「あんずちゃんと一緒に、わたしも手伝います」


「そうか。ありがとう」


 精霊がニコリとし、ミコちゃんも笑う。つられて私も。

 ケイゾーだけが、しかめっ面だ。


「ケイゾー、まだ信じないの」

 あたしが言うと、ケイゾーはますます顔をしかめた。

「あやしい。ぜったい裏があるぜ」


「ないってば。地球が大変なんだよ」

「うるせーな。おれは単純じゃねーんだ」


 ケイゾーは、精霊の顔を長い間見つめていた。精霊はその間も、ずっとほほ笑んでいる。


「おれは信じてない」

「そうか」

「信じるもんか」


 でも、とケイゾーは精霊から目をそらす。

「こいつら、二人を放っておけないからな。おれも付き合ってやる」


 な、なんつぅ、偉そうな態度。

 あたしは、身震いするほど、ぞっとした。

 こんどはこっちが、吐きマネをしたくなる。


 でも、精霊は愛想がいい。

「そうか。ありがとう」って、にこやかだから。

「ふんっ」


 ケイゾーはぷいと横を向いた。

 そんなケイゾーに精霊は小さく笑ったあと、「それと」と、また体を前にかたむける。自然と、あたしたちも身をよせた。


「実はあと一人、必要なのだ。それと、犬はいないだろうか?」

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