黒いのの過去【中編1】

 悪魔リリスと、彼女によって生み出された悪魔との戦いは、百年経ってなお続いていた。

 悪魔の中で頭角を現した者が、魔王となって世界を脅威の渦に陥れた。リリスから名をもらった魔王はダインスレイブと呼ばれるようになった。リリスに誓いを立て、その後彼女との性行為で、魔王と彼女の力を兼ね備えた息子ディクトを生み出した。性行為で魔王にもリリスの力が分け与えられ、いっそう勢力を強めた。悪魔は次第に魔王によって統率され、軍隊となって地上を闇に染めていく。


 三元神と大天使達は長き戦いによって疲弊の色が隠せなかった。神域で彩星から濃厚な魔力をもらって回復はしているが、一向に優勢とならない状況に疲れ果てていた。三元神も大天使達の焦りに気づいていた。戦いに参加する大天使も、神の民を守る天使も立派に戦っている。彼らを励まし、時には勇気づけたて士気を向上した。

 悪魔に敗れ戦死した者も出た。死を司る天使が、彼らに対して安らかにあるよう悼んだ。創造源神も神域の神殿から出て、ユリの花を手向けた。

「死してなお清浄であらんことを。我が愛しき天使達よ、よく戦ってくれた。勇敢なお前達を誇りに思うぞ」

 創造源神は十字を切って彼らに祈りを捧げた。悲しげな瞳は愛する創造物に向けられている。下っ端の天使であっても、自分が生み出した大切な創造物だ。創造源神は生み出した全てのものを愛している。望まぬ死をもたらされた者達よ、清く正しく輪廻の道に乗るように。

 神殿の奥の部屋に戻る。黒いのが魔力ガラスの前に立っていた。

「クロノワ、情勢はどうだ?」

 彼女は創造源神の方へ体を向ける。

「五分五分。情勢は平行線を辿ってるね。人間達が立ち向かうことを覚えてくれたおかげで、こっちの味方は増えつつあるよ。でも、まだ力が足りない。三元神と大天使の力も無限じゃない。悪魔共にもリリスという後ろ楯がいるから、やっぱり最終的にはリリスを倒さないとどうにもできないよ」

 創造源神は瞳を伏せた。リリスは何故堕天使となったのか。未だに理解できなかった。大天使の報告から、熾天使レイグに狂気的な愛を捧げていたと知った。しかし、どうして堕天する必要があったのか、そこまでは分からず仕舞いだ。

「我はリリスも、我が愛しき創造物として愛していた。しかし彼女は我を嫌っていたようだ。覚えている。あの時に見た眼差しを。刃物で突き刺すかのような瞳を」

「あいつは私のことも嫌っていたみたいよ。・・・・・・まぁ、考えてもどうしようもないことだ。深く思い込むのはやめにしようぜ」

 それより、と黒いのは続ける。

「地上では、力を持った勇敢な人間が増えてきているようだよ。一人で村を守ってる奴もいれば、複数人で協力して悪魔を退治してる人もいるって聞く」

「そうか。民は戦うことを覚悟してくれたか」

「今なら、魔王ダインスレイブに辿り着くことも可能かも。ディクトっていう魔王の息子も作り出されたみたいだけど、そいつのことは気にせず頭をぶっ叩けばいけるって」

「ふむ。ディクトなる魔王の息子とな。気がかりだが、今はリリスと魔王を倒すべきだ。用心はしておこう」

 ふと、部屋の入り口に気配があった。振り返ると熾天使レイグがそこにいた。

「申し訳ありません、立ち聞きをするつもりではなかったのですが」

「よい。入れ」

「はっ!」

 創造源神に促されてレイグは部屋に入ってきた。

「創造源神様、俺を前線から外してはもらえませんか」

「何か、あったか?」

 レイグは先程の話を聞いて思ったことを告げる。

「俺が地上を巡礼しに行きます。強き者達を集め、魔王の住まう城へと攻め入り、打ち倒してきます」

「・・・・・・険しき道のりとなるぞ」

「承知の上です」

 レイグは神剣シャルギエル・セラフィムを出現させた。ひざまずき、剣を両手で支えるように持って創造源神に捧げる。

「この剣に誓って、必ずや魔王ダインスレイブを打ち倒し、生還してみせます」

 創造源神は剣を受け取り、口づける。

「その覚悟、我はしかと見た。無事に帰ってくるのだぞ、レイグよ」

 騎士の誓いはここに成された。ならば、これからやることはひとつしかない。

 熾天使レイグは立ち上がった。剣が返される。神剣シャルギエル・セラフィムは冴えざえと赤く光っていた。剣を亜空間へと片付けたレイグは、創造源神の強き眼差しを受け止める。

「はい。約束します。創造源神様の下へ、必ず戻って参ります」

 拳を胸に当てて、レイグは眼差しに答えた。創造源神は深く頷いた。

「クロノワ、お前も協力してれるな?」

 創造源神は隣の彼女へ顔を向ける。にやりと笑っていた。

「もちろんだとも。お手伝いするわよ」

 かくして、地上世界を巡礼することが決まった。熾天使レイグは彩星エルデラートに報告するため、神殿の奥の部屋へ入った。

「我らが父であり母である彩星よ、熾天使レイグ・セラフィムが地上を歩むことを許したまえ。必ずや魔王を倒し、此処に帰ってくることを誓おう」

 レイグの言葉に、魔力の帯が淡く光を放った。彩星は人の言葉ではなく音を発して会話をする。優しい音色が聞こえてきた。レイグを応援するとのことだ。

「ありがとうございます」

 魔力の帯がレイグに伸びた。全身にそっと巻き付くように包み込むと、レイグの衣装を変えていく。長い金髪を赤いリボンでひとつ結び、魔力で創られた軽鎧と籠手を纏い、背に腰までの長さのマントを羽織った。耳には赤い魔力の結晶でできたイヤリングが付いた。

「ありがとうございます。熾天使レイグ・セラフィム、いってきます」

 魔力の帯が離れていく。レイグは手を胸に当てて小さく会釈した。部屋の魔力の帯が穏やかに流れていく。優しい音色がひとつ鳴った。いってらっしゃい、と彩星は言っているようだ。レイグは頷いて、魔力の部屋を出ていった。

 

 レイグは同じく三元神である智天使ケント、座天使ヴァイゼに巡礼の報告をした。ケントが眼鏡を直す。ヴァイゼがふんすと大きく息を吐いた。

「お前が前線から外れれば戦いは厳しいものになるだろう。しかし、そうしなければいつまでもこの戦争が続いてしまう。私達で出来うる限り食い止めよう」

「我らが三元神が地上の連中に遅れを取るなよ! 魔王を倒すそのときまで、我らは死力を尽くして戦おうぞ!」

 固く握手を交わす。レイグは二人の激励と、智天使と座天使の大いなる加護を授かった。

「必ず戻ってこよう。それまで頼んだ」

 熾天使レイグは彼らに背を向ける。勇んで神域の神殿を後にする。外ではレイグを慕う大天使と天使が待っていた。地上の世界へと繋がる転移の紋を囲むようにして。

「お前達、どうして」

「レイグ様の勝利を願い、想い、此処に集結致しました。我々は皆、同じ気持ちです」

「彩星エルデラートに、我らが勝利を!」

「地上界にどうか光を」

 天使達は胸に手を当て、レイグに最敬礼をした。レイグも礼を返す。

「ありがとう。感謝する。親愛なる天使達よ。・・・・・・レイグ・セラフィム、参る!」

 レイグは転移の紋に乗る。地上界エルデラートへと向かう転移の光に包まれて、消えた。天使達は最敬礼のまま、熾天使の背を見送った。


 レイグの去った後、神域の一柱と一人はやるべきことを考えていた。彼の手助けは黒いのがする。リリスとの対決になった際は自分も出よう。創造源神は思考を巡らせていた。

「クロノワ、お前に頼みたいことがある」

「なんだいカレスティア?」

「レイグの旅路に介入してほしい。ただ手助けするだけではなく、危機に陥った時、戦いの時、お前がいた方が良い」

「それはいいけど、私が介入して歴史を動かしてもいいもんかね?」

「・・・・・・そうだな。だが、お前がいることで変わる歴史もあるはずだ。我は創造を司る神。対となる破壊することはできぬ。お前ならば、適任であろう」

 カレスティアが微笑む。黒いのは微笑みの意味がいまいち分からなかった。しかし言いたいことは分かる。創造を司る彼は、自分のように創造物を破壊することができない。仮にもリリスは創造源神の創り上げた創造物。いざ戦いになったとき、破壊を司る自分が適任となる。レイグの巡礼の、いわば保険だ。

「まぁ、あんたさんがそう言うならやるしかないかね。レイグがやられるとは思えないけど、念のための私だ。『破壊を司る者』として動くさね」

 魔力ガラスのモニターを見る。レイグが無事に地上に降り立って町に辿り着いたようだ。いざこざが起きているのか騒がしい。

「巡礼はまだ始まったばかりだ。これからどうなるか、見守っていこうじゃないの」

 黒いのは魔力ガラスの椅子に座る。モニターを眺めてレイグの様子を観察しつつ敵の根城を探る。

「さぁ、どこにいるか教えてくれよ」

 光に映し出されたパネルがいくつも彼女の周りに浮かび上がる。背後で創造源神が見ている。彼も同じようにパネルを現して情報を探る。

「クロノワ、これは」

「ん、なんかあった?」

 彼女の隣に移動してパネルを見せる。海が広がっていた。

「中央海に強い闇の力が感じられる。ここを洗い出してみよう」

 中央海、それは四大大陸に囲われた海のことをいう。その海に異変があった。空の赤みが強く、悪魔が大量に飛び交っている。絶海の孤島のように、海に穴を開けて浮かんでいる城が現れた。

「魔王の根城ってところかね?」

「恐らくは。クロノワ、レイグに知らせてくれ。最後の地はこの城になるだろう」

「りょーかいよ」

 黒いのは魔力ガラスの椅子から降りた。ちらりとモニターを見ると、レイグは町から出て誰かと話しているようだ。

 創造源神から離れて転移を起動する。光に包まれて消えた。


 地上界に転移の紋が現れた。光が吐き出したのは『破壊を司る者』。レイグがこちらを見ていた。彼の向かいには二メートル近い巨躯の男が大剣を背に担いで立っていた。気にすることなくレイグに説明する。

「はい、マークしといた地図」

 レイグは黒いのから地図を受け取ると、中央海に記された丸印を確認した。海に囲まれた魔王の根城。ここが最終目的地だ。自分一人なら空を飛んで行けばいい。しかし、とレイグは目の前の男に目をやった。彼は人間だ。海を渡るには船か転移で行く他ないだろう。黒いのと短く会話を済ます。

 と、何事もないようにやりとりをしている二人を見て巨躯の男は眉間にしわを寄せた。

「アンタ、仲間がいたのかよ」

 男はレイグに問う。レイグは頷く。黒いのは、にゃはと笑った。

「そうそう。これから旅をサポートさせていただく黒いのだよ。よろしくね」

 用件を済ませると、転移の紋で神域に帰っていった。

「彼女は頼りになる数少ない味方だ。こうして情報を伝えに来てくれる。不審な者ではないから安心してくれ」

「つっても、アンタ、色々隠し事してそうな感じだな」

「全てを語るにはまだ時期尚早なのだ。すまない」

 頭を下げるレイグを見て、男は小さくため息を吐いた。

「いいぜ。天使様も言いたかねぇことあるんだろうよ。まぁ、これからよろしくだ。悪魔共をぶっ倒そうぜ。名乗り遅れたな。おれはアドルフ・パースター。見ての通り司祭をやってる。いや、やっていた、だな」

「あぁ、よろしくな」

 レイグとアドルフは街道を進む。覚悟を決めて二人は歩を進めた。


 神域から一柱と一人は見守っている。彼らの旅に幸あらんことを。


*******


 レイグが巡礼に出て、地上では一ヶ月が経った。彼は現代で真国に当たる島国に訪れていた。まだ独自の文化は築かれてはおらず、神の民が教会に集まって祈りを捧げる光景がみられた。

 神域で黒いのは彼らを見ていた。魔力ガラスのモニターにはレイグとアドルフが映っている。モニターしなくとも魔力で繋げば地上界のありとあらゆる『現在』が見られるが、神経を使うとのことで黒いのは嫌っていた。 

「真国で新たな仲間が増えたみたいよ」

 後方で魔力ガラスの椅子に座る創造源神に話しかける。彼は微笑みを浮かべて立ち上がった。黒いのの椅子の背もたれに手をかけてモニターを見る。淑やかな女性――ルーネが仲間に加わったのを確認した。

「彼女は歌姫なんだとさ。歌を使って術式を操れるんだって」

「ほう。歌を用いて術式を」

 この時代、人間種族はまだ術式を上手く扱える者が少ない。高度な術式を使えるとなれば、天使に近き者として崇められていた。治癒術を使える者は特にその傾向が強かった。ルーネはその両方、六大属性の術式と治癒術が使える。旋律が詠唱となって術式を発動するようだ。

「心強い仲間が増えて何よりだ。レイグの巡礼にも意味がある。我も状況が違えば、地上界を旅してみたいと思うのだが」

「残念だけど、それが叶わない現実なのよね。私も、こんな戦争なんて起きなかったら放浪の旅に出たかったよ」

 不意に部屋の入り口から足音がした。二人分の足音だ。

「レイグはどうなった?」

「我にも聞かせてくれないか!」

 智天使ケント、座天使ヴァイゼがずかずかと入ってきて、二人を挟んでモニターを眺める。黒いのが顔を向けて、げえっ、と声を上げた。

「落ち着かぬか、ケント、ヴァイゼ」

「落ち着けねぇですって!」

「見知らぬ女性と男がそばに。もしや、地上界で仲間を集めているのか?」

「お前ら、ちょいと黙りなさいって。耳元で叫ぶな」

 とはいっても、興奮しているケントとヴァイゼには聞こえていない。モニターに映る彼に夢中だ。

「巡礼は無事に進んでいるのか、クロノワ」

「順調よ、ケント。ヴァイゼはでかいし近いからちょいと離れなさい」

「我をのけ者にする気か、それは許さんぞ!」

「そうじゃねぇって! いやだからちーかーいー! つーぶーれーるー!」

 まるで子供のようにはしゃぐ二柱の三元神は、目を輝かせてモニターを見ている。創造源神が、はは、と口元を緩ませた。

「そう急くな。レイグは逃げないから、ゆっくりしていけ」

「私達はこれから天使達の指揮に行かなければならないのです。ゆっくりしていられませんよ!」

「そうですぜ! レイグがいない今、残された我らが指揮せずして戦いは務まりませんぞ!」

「はいはい分かったから持ち場に戻りなさいって」

 その様子を見て創造源神がふふ、と口元を押さえて笑う。

「ははは。お前達、レイグが心配なのはよく分かった。だがな、我も見守っているし、お前達も彼に加護を授けただろう。三元神の力、全てが彼に集まっていると言っても過言ではない。レイグは無事だ。今も、これからも、な」

「創造源神様、そうは言っても心配で・・・・・・」

「我らが自慢の熾天使とはいえ、悪魔にやられでもしたら・・・・・・」

「ケントよ、心配はいらぬ。何か起こればそこなクロノワが対処する。ヴァイゼよ、案ずるな。彼は強い。悪魔の端くれにやられることはない。だから、二人とも安心してくれ」

 なだめるような創造源神の言葉に、反論しようと口を開いたが、二人はすぐに閉じた。納得せざるをえなかったからだ。レイグは強い。底抜けに。創造源神を心から信仰し、何かあれば常に前線で戦っている。もちろん残る二人もレイグと同じほど――それ以上と言うかもしれないが――創造源神を信仰している。だが、熾天使の炎は神への愛によって輝かんばかりに燃え上がる。レイグの炎が燃え盛っているということは、つまり、神への愛に溢れているということだ。

「悔しいけど、レイグには勝てないな。さすが、熾天使だ」

 智天使ケントがため息を吐くように呟いた。座天使ヴァイゼがうむ、と頷く。モニターに映る熾天使レイグは、落ち着いた様子でアドルフとルーネの前を歩いていた。港へ向かうようだ。

「レイグ、無事に巡礼を進めてくれよ!」

「だから、近いってばヴァイゼ! うぉおお、胸筋に殺される・・・・・・ふぐぐ!」

 ぎゅむ、と黒いのの頭がヴァイゼの発達した胸の谷間ににめり込む。隣の創造源神が笑った。ケントも笑ってみている。

「笑ってる場合かー!」

「なんだぁ、うるさい黒いのがいやがると思えばお前か」

「わざとか! わざとなのか!?」

「わざとだ」

「ばんなそかなっ・・・・・・」

 しばらくこんな状況が続いていた。和やかなムードはいつぶりだろうか。しかしそれもすぐに終わる。黒いのが解放されたのは、大天使が二人を呼び戻したときだった。


*******


 レイグが巡礼を始めて三ヶ月。共に悪魔の王を倒す仲間はいっこうに増えない。司祭で大剣使いのアドルフと、歌を用いて術式を使役するルーネを率いて四大大陸の、現代では王国に当たる大陸を旅していた。

 悪魔との戦いは変わらず過酷なものだった。時が経つにつれ、闇に下る者も増えていった。疲弊した天使達の中にも、悪魔にそそのかされて堕天使となる者が現れた。創造源神に反旗を翻し、世を混沌に貶めるために活動を始めたのだ。黒いのがレイグ達にその旨を伝えると、とても悲しげな顔をしていた。仲間となった司祭アドルフ、歌姫ルーネも驚きを隠せない。

「俺の部隊に、闇に下る者などいない。そう信じている。天使達は創造源神様へ忠誠を誓っている。しかし、この非常事態に、それもあり得てしまうのかもしれないな・・・・・・」

「堕天使となった天使に関しては、創造源神も心を傷めているよ。私も対処するために動くことにする。ここからはちょいと、私も動くとするよ」

「と、言うと?」

「一緒に行くに決まってるじゃん」

 レイグは驚いたのか、一瞬目が大きく見開かれた。すぐにいつもの冷静な表情に戻った。アドルフとルーネが不安そうに見ている。

「この子供が一緒に来るだと? 戦場を知らない奴が、おれ達の旅に同行するというのか?」

「危険だと思うわ。だって、悪魔を相手にするのよ?」

 アドルフとルーネは心配している。黒いのは不敵な笑みを浮かべた。

「安心してよ。それと私は一応大人なんだけどな。子供じゃないし」

「こいつの言い分を信じていいのか?」

 アドルフが厳しい眼差しでレイグを見る。彼は微笑みながら頷いた。

「彼女の力は俺がよく知っている。足手まといにはならない。むしろ、俺が遅れを取るかもしれないほどだ。彼女は、世界の」

「おっとレイグさん、それ以上はナシナシ。言わなくていいよ」

「いやしかし、素性を知ってもらわねば信用に足らんだろう?」

「いいのよ。私はただの真っ黒くろすけ。神出鬼没の変な奴で結構よ」

 にゃは、と猫のような笑みを浮かべて笑う。アドルフとルーネは首を傾げて不安げに黒いのを見つめた。

「戦いで足を引っ張るなよ」

「安心して。邪魔はしないから」

 黒いのは笑う。果たしてこれからの旅でどうなるのか。巡礼はまだまだ続く。

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