黒いのは全てを語る

 ルフィアの話を聞き終えて、皆は静かに頷いた。

「これが、私の過去だよ」

 ルフィアは席を立ち、円卓の椅子に腰かけた。ふと窓の外を見ると、雨が降り始めていた。屋敷の屋根を叩く音が響く。

「雨降ってきたみたいだね」

「元々降りそうな雲行きだったからな」

 ラインがさて、と言葉を吐き出す。

「これで過去の告白は全員か?」

「ん? あと一人いるじゃねぇか」

 フェイラストが指を差す。黒いのだ。彼女は腕を組んで目を閉じていた。

「そうだ、黒いのは自分のことなんにも喋ってないや。ラインさんの過去のときに喋ってただけじゃん」

 聖南がむっとする。黒いのが目を開けて紫の瞳を聖南に向けた。

「私の過去、ねぇ」

 ふぅ、と息を吐く。黒いのは立ち上がって皆が告白した椅子に座った。

「そうだねぇ。どこから話せばいいのやら」

 黒いのは創星歴からこの世界を見てきた『破壊を司る者』だ。話すとなると膨大な時間がかかるだろう。

「さすがに、四千年分の記憶を全部話すなんてできないからね。どこをかい摘まんで話したらいい?」

 問いかけられた皆は悩んだ。彼女に何を話してもらうべきか。と、ラインが口を開く。

「アンディブ戦争の詳細を話すことはできるか?」

 アンディブ戦争。それはかつて神と天使、人間対悪魔の間でおこなわれた戦争だ。別名百年戦争。熾天使レイグ率いる七英雄が活躍して終結した、長きに渡る戦争だ。

 あれ、とフェイラストが疑問に思って口に出す。

「アンディブ戦争、七英雄が勇猛果敢に戦ったとあるが、どの文献を見ても六人しかいねぇんだよな。なんでだ?」

「そうだよ。本当に頑張ったのは六人さ」

「じゃあ、あとの一人は誰なんだ?」

「目の前にいるじゃん」

 黒いのは自分を指差した。フェイラストが固まる。聖南がびっくりして声を上げた。キャスライが目を丸くする。

「お前が七英雄の最後の一人だって!?」

「えぇ、クロエさんが、英雄!?」

「まぁまぁ落ち着いてよ」

 黒いのは両手を振ってなだめるようなジェスチャーした。身を乗り出す彼らが着席する。ラインとルフィアは落ち着いていた。

「英雄の一人として、当事者として、あの戦争を話そうかね。消された七人目の英雄の過去を」

 黒いの――『破壊を司る者』は静かに語り始めた。

 語る言葉と共に雨音が屋敷の中に渡った。

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