過去編 歪められた運命

紅は真実を語る

 あれから月日が流れた。季節は遅咲きのサクラが咲く時期に突入を始めている。ラインはフォートレスシティで母セレスとティータイムを楽しんでいた。

「またちょっと出てくることになる。それでもいい?」

「いいわよ。それにしても、前にあった赤い空の事件からもうだいぶ時間が過ぎたわねぇ」

「そうだな。今は、大丈夫だ」

「きっと、お父さんもあなたの成長に喜んでるわ。依頼屋クライアでも上位の人達の仲間入りしたんですってね」

 ラインは尊敬する父の跡を継ぐため依頼屋クライアを続けていた。今では彼の実力が認められ、上位数名にしか与えられない二つ名も戴いている。

「依頼新聞にも載ってるもの。『紅の疾風』またも大活躍、ってね」

「はは、また書き立てられているな」

 苦笑いが出た。セレスはラインの顔を見て微笑んだ。

「ニャーオ」

 足元が温かい。猫がすり寄っていた。母猫はリリー、子猫はミィとセレスが名付けて飼い始めたのだ。野良猫だった二匹は、冬の寒い時期に拾われ、今ではすくすくと育っている。

「リリーとミィもあなたが温かいのを知ってるみたいね」

「確かに俺は火を使うけど、人を暖房器具みたいに扱われてもな」

「そんなつもりはないものねー?」

「ニャーオ」

 ラインは、あいたティーカップを洗いにいった。リリーが尻尾を立ててついてくる。ご飯がもらえるのかと思っているらしいが、さっきおやつを与えたばかりだ。

「やれやれ、食いしん坊だな、お前は」

「ニャー」

 洗ったカップを拭いて片付ける。先ほど座っていた椅子にリリーが飛び乗った。そのまま姿勢を整えると丸くなって寝る体勢に入った。

「あなたのいたところが温かいんですって」

「やれやれ」

 リリーの頭を撫でて、ラインは、玄関に向かう。紅いロングコートを着て、玄関を出る。

「いってらっしゃい」

「いってきます」

 ラインは街の外にある固定転移紋に向かった。


*******


 フォートレスシティの固定転移紋から転移をしてやって来たのは、秘密基地の丸太屋敷。今日はここで集まるように皆へ伝えていた。雨の降りそうな空模様だ。ラインは屋敷の中へ入る。

「おう、ライン」

 フェイラストが手を上げて挨拶する。他のメンバーもそろっていた。

「で、なんだよ。話ってのは」

「何か重大事件?」

「いや、そういうことではないんだ」

 ラインが真剣な表情になる。

「俺の過去の話だ」

 ルフィアが息を飲む。自分は彼の過去に深く関わっている。何が起きたのか知っている。

「ラインさん、なんで急に過去の話?」

 聖南が首をかしげた。

「これから俺達が戦う相手。堕淫魔リリス。あいつのやってきたことを知っておくべきだと思ってな」

「僕達もリリスに何かされる可能性があるとか?」

「万にその可能性があった場合、知っておくのも悪くないだろ。というより、俺は伝えなきゃいけないと思った」

 言葉を切って、ラインは一人一人の顔を見た。

「黒いのは言っていた。俺達は、辿るべき運命を歪められた、と。だから、どうして歪められたのかを、今一度考えるべきだと思ったんだ。俺達が出会ったのは、偶然ではなく必然であったかもしれない」

 ラインは言葉を切った。すると、屋敷内に設置した固定転移紋が光った。吐き出されたのは黒いのだ。

「その話、私も抜きに進めないでよ。私、あんたの人生一周目の当事者なんだけど」

 どこかで聞いていたような口振りだ。もしかしたら神域で見ていたのかもしれない。

「お前にも知る権利があったな」

「元より私はあんたの過去を全部見てきたクチよ。口出しするから先に謝っとく。ごめんね」

 各自椅子やソファーに座る。ラインは皆の見える位置に椅子を持ってきて座った。

「・・・・・・それでは、語ろう。俺が受けてきた全てを」

 

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