第28話

 翌朝、俺は珍しく早起きした。どのくらい早起きだったかと言うと寝起きのハルヒを見られたぐらい早起きだったはずだ。だが俺は起きて2秒もたたないうちに何処からともなく出てきたステッキで殴られ強制的に夢の中へと舞い戻った。おかげで次に意識が戻ったのは太陽がまんべんなく地球を照らす時間だった。


「乙女心ゆえだ。許してあげたまえ」


 朝起きるのが遅ければ怒鳴られ、早ければ殴られるんじゃ、俺はいつ起きればいいんだ。などとシャミセンと話しながら大英博物館までやってきた。図書館図書館っと。


「すみません、ここで司書をしている長門有希さんに会いたいのですが」


 たぶん奥の方にいるということで、俺は受付に丁寧に礼を言い、博物館の中を歩いてった。いた 。




 その瞬間、俺はあの日長門が読んでいた本を思い出した。『怪盗ルパン』だった。


「紹介しよう。我が主であり君と会いたがっておった男だ」


 ぴょこっと俺のコートの懐から顔だけ出したシャミセンが答えた。ちなみに俺はここへ来る道中、ずっとシャミセンを自分のコートに入れて歩いていた。


「何?」


 抑揚のない無機質な懐かしい声がした。よかった、性格は元のままのようだ。単刀直入に言うと俺のことを覚えていないか。


「知らない」


 ある程度予想していたが、やはりそうか。さてどうしたものか。


「やーやーそこにいるのはキョン君じゃないかっ!」


「へっ?」


 呼ばれて後ろを振り返ると鶴屋さんがにゅっと立っていた。目は一日で治ったんですね。


「いやー昨日はルパンにまんまとやられちゃったよっ!もうちょっとで捕まえられたんだけどね~」


 と言って後ろにいる長門に目を向けておやおや~とわざとらしく言った。


「そこのめがっさかわいい子は誰かな?もしかしてお邪魔だったかな」


 なんでそうなるんですか。それになにニヤニヤしているんですか。


「いやあ実は今日はキョン君じゃなくってそっちの子に用があってきたんだ」


長門の顔が僅かに強張った。


「君の妹君に用があるんだけど何処にいるのかな?」



「最近会っていない」


「へーそうなんだ」


「そう」


 鶴屋さんはふーんと言いながら長門と顔がぶつかりそうなほど顔を近づけた。あくまで笑顔のままで。


「用事が済んだのなら帰って」


 了解!と言って鶴屋さんはあっさり出ていった。


「あなたも帰って」




 すまん、邪魔したな。俺はシャミセンをコートの中に戻し博物館を後にした。



 朝比奈さんのところへ招待状が届いたのは夕方頃であった。

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