第25話 うおおおお、せっかくいいところだったのに!

「高校時代の兄貴のえっち! 雪のおっぱいにだまされて! なによ、牛みたいなおっぱいの癖して!」

「きゃー触らないでー! 変態!」

 雪が叫ぶ

「兄貴? 今、兄貴って言ったか?」

 暗くてよく顔が見えないが、その声は紗季だ。


「紗季?」

「そう、私よ、兄貴。久しぶり。何年ぶりだろ? やっぱ若い! 高校生だよー兄貴!」

 声の主が雪を解放した。そして俺に向かって笑顔で手を振った。


 確かに、紗季だ。だが、ん? ちょっと、というか、かなり老けてるぞ? どちらかと言えば咲江さんに似ているような?

 だいたい、久しぶりって。数時間前まで一緒だったろ?


「この変態ババアが紗季ちゃん?」

 解放されて自由になった雪が紗季を見て言った。

「もう、雪失礼ね! 35歳はババアじゃないわ!あと、あなたよりは変態じゃないわよ! 雪、あなたって、ホント、腹黒いのよね! 高校時代に気がつかなかった私がバカだったわ!」


 35歳? 紗季が? 紗季は15歳だ。


 あ。


 もしかして。


「も、もしかして、タイムリープ? 紗季なのか?」

 雪とにらめっこをしている紗季に言った。

 紗季は雪とのにらめっこを放置して、俺を見た。


「……そう。未来から来たわ。正確には20年後。過去を変えるためにね」


 と、タイムリープ紗季が言ったその時だった。


 茂みの向こうから双眼鏡を手にした中年男性が飛び出してきた。


「うおおおお、せっかくいいところだったのに!」

 双眼鏡を手にしたまま、中年男性がこちらへ向かってきた。


「きゃあ! 変質者!」

 雪が絶叫した。

「ぬがあああ! あとちょっとでセックスしそうだったのに!」


 大声で叫びながら変質者が俺の方へ突進する。殺気すら感じられる。


「ちょ、変質者よ高校生の兄貴! 早く警察に通報して! 私、未来から来たから、この時代に使える携帯持ってないの!」

 タイムリープ紗季が言った。

「は、はい!」

 俺はポケットを探った。

 ない。

 そうだ、慌てて部屋を出たのでスマホは置いてきたのだった。


「……スマホ忘れた! 雪ちゃん! スマホ持ってる?」

「え? あ、はい、ちょっと待って下さい……あれ、どこかな……」

 恐怖と焦りで雪はスマホを探し出せない。


「俺は変質者ではない!」


 突進してきたのは変質者ではなかった。


「Fさん? Fさんじゃないですか」

「Fさん? 知り合い? 兄貴」

「知り合いというか……」


 俺が説明するより早く、Fさんが喋った。

「俺は20年後からやって来た、青木健太37歳。独身にしてエターナル童貞、おまけに引きこもりで無職のニートだ。30歳の誕生日を童貞で迎えてしまったばかりに、魔法使いになった。17歳の俺に童貞を捨てさせ、魔法使いになるのを回避すべく、全魔法力を使って過去にタイムリープしてきたって訳さ!」


 未来の俺、引きこもりで無職のニートなのかよ。

 勘弁してくれ。 


 Fさんがタイムリープ紗季をギン! と睨みつけた。

「お前、誰だ? 咲江さんに似ているが、咲江さんにしては若いな?」

「ちょっと、ママと一緒にしないで!」

 怒ったような声で紗季が返事する。

「ママ? ……もしかして、紗季? え? 紗季って高校生だろ? JKにしては老けすぎだぞ?」

「ちーがーうー! 兄貴と同じく、私も未来から来たのよ!」


 見つめ合う二人。

 先に沈黙を破ったのはFさんだった。

「おおおお、なるほど! 紗季だ! うん、紗季だよ! おーっ、元気にしてたか? 旦那にえっちな夢見せてるか? 子供2人だっけ? もう何年も会ってないよな? 今九州だっけ? 旦那が転勤族で大変だな!」

「……何言ってるの? 私、独身だけど」


「え?」と、Fさんが短く叫んだ。

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