第23話 えっちしてください

 今すぐにでも雪に抱きつき、ワンピースを胸元までまくり上げ、下着を脱がせ、行為に及びたい。


 そんな気持ちを必死に押さえ込む俺を見て、雪は意地悪そうに笑っている。


「この前、紗季ちゃんが私を催淫したから、そのお返しです。ふふ」

 雪がワンピースを元に戻す。フェロモンの効果が多少薄れた。


「紗季ちゃん、私がサキュバスって知らなかったから、催淫できると思って、悪戯してきたんですよ。知ってます?」

「ああ、その話は聞いた」

 確か、股間を抑えてトイレに駆け込んだのではなかったか……。


「サキュバスはサキュバスを催淫出来ないんです。だから、私、催淫されたふりしてみたの。そしたら紗季ちゃんクスクス笑って。親友なのに、ちょっとひどくないですか?」

「そうだな、悪戯にしては度が過ぎるかな……」


 雪が再びベンチに腰掛ける。今度は、俺に身体をぴたっとくっつけてきた。


「……健太さんは、紗季ちゃんと、夢、淫夢のなかで……してるんでしょ?」


 俺が催淫される様子を楽しむかのように、雪は俺のふとももを触ってくる。

「紗季とはそういうことはやったことは無いんだ」

「嘘。絶対嘘」

「本当だ……これだけは本当だ。信じてくれ。確かに、紗季は俺に淫夢を見せる……だが、えっちはしたことないんだ。エロいカッコで出てきたり、触らせてくれたりはする、だが、それで、血を吸うだけなんだ、紗季は!」


 雪の手が俺の股間に伸びる。そのまま触って欲しいという本能の声を無視して、なんとか雪の手をどける。

「血だけ? 本当に? ……お口で精を吸ってもらったこともないんですか?」

「ああ、ない」

 咲江さんにはしてもらったことあるけどな。


「私、紗季ちゃん、ずるいって思ってたんです。お兄ちゃんいて、毎日、お兄ちゃんに淫夢見せて、精吸ってるに違いないって。そして恋人としても付き合ってるって思ったんです」

 雪が言った。


「私、一人っ子だから……人間のお兄ちゃんとか弟かいないし……だから、毎晩適当な男の人に淫夢を見せて、血を吸ってたんです。でも、この前、変な男の人の夢に出てしまって……無理やり変なことされそうになって……。どうしようもなくなって、なんとか血だけ吸って逃げてきました」


「……途中で夢から出てきたら良いじゃないか」

「出来ないんです。淫夢を見せたら、首から血を抜くか……あそこから精を抜くかしないと、淫夢から帰れないんです」


 初めて知った。淫夢の仕組みを。

 

「だから、紗季ちゃんがうらやましかったんです。私もお兄さんがいたら、毎日好きでもない男の人に裸見せたり、おっぱい触らせたりしなくて良いのにな、って」

「確かにそれは辛いな」

「私も、お兄ちゃん欲しいなって……」


 そうだったのか。


 サキュバスとはいっても女子高生だ。夜な夜な知らない男を誘惑し、興奮させるのは怖いだろうし気持ち悪いだろう。


「雪ちゃん、あの……なんだ、俺でよければ、その、協力するぞ。お兄ちゃんにはなれないが、あー、血を吸うくらいなら……」

「優しいんですね」

 雪が笑う。


「私ね、大人しく見えるでしょ。でも、本当は……悪い子なんです……」

 雪が再び、俺のふとももに手を乗せた。


「……好きならさっさとえっちすればいいのにね、紗季ちゃん。紗季ちゃんが悪いんだよ。自慢ばかりするから。私……健太さん好きなんだもん。だから、もらうの。紗季ちゃんとはえっちしてないんですよね? 付き合ってもないんですよね?」

「ああ、そうだ」

「てことは、本当にフリーなんだ」


 雪は、俺にしがみついてきた。


「だったら……私と付き合ってください。そして……私と……夢の中でも、現実世界でもいいから……えっち、してください」

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