第14話 妹で興奮する兄

 それからいつもと同じ様に朝食を食べ、身支度をした。

 いつもと違ったのは、今日も紗季と一緒に登校したことだ。


「兄貴、昨日どうだった?」

 登校中、頬をピンク色に染めながら、紗季が聞いて来た。

「……夢の中で言っただろ?」

「もういっぺん、ちゃんと言って欲しいの」

「……言わなきゃダメか?」

「うん」

 紗季が俺の目を見た。


「……良かったよ。エロかった」

「どれくらい?」

「すごく」

「すごくって?」

「ものすごーく、だ」

 俺は言った。


「わかんない。大きさで教えて。いつもはどれくらい? これくらい?」

 紗季が両手でボールをつかむ様な格好をして、大きさを示した。

「そうだな、それくらいかな」

「じゃあ、昨日は」

「こーれくらい」


 これは両手を天に挙げ、悟空が元気玉を受け止めるかのようなポーズをとった。


「そんなに!? よかったー」

 紗季が笑う。


「私ね、がんばったの。水着もね、あんなえっちぃの持ってないよ。そんなえっちな女の子じゃないもの。でもね、兄貴に興奮してほしかったから、ネットで色々調べて、えっちな水着探したんだよ」

「へぇ、あんな水着あるんだ」

「うん、あるの。……いろいろなところ、透けてたでしょ? どうだった? 興奮した?」


 俺は昨日の夢を思い出し、目の前の制服の沙樹とイメージを重ねた。制服の胸のあたりを見る。夏制服のシャツで押し込まれているが、あの下には程よい大きさの乳房があって、丁度胸ポケットのあのあたりに乳首があるはずなのだ。


「うー……うん」

 俺は返答に困る。


「あー、兄貴、今想像してたでしょ、私の裸! えっち!」

 俺の視線に気がついた紗季が意地悪い顔で言った。


「し、してないぞ。少なくとも裸は想像していない。断言する」

 想像したのは乳首のポジションだ。乳首そのものじゃない。


「じゃあ何?」

「……秘密だ」

「もー、えっち!」


 紗季が俺にじゃれつく。自分の腕を、俺の腕に絡めてきた。


「おい、ちょ、腕を組んで学校に行くのか?」

「だめ?」

「だめって、血の繋がった兄弟でもやらんだろ、これは」

「……きのう、私のお尻ぎゅーって掴んだくせに?」


 俺の耳元で紗季がささやく。


「だ、だから、あれは波が……」

 俺は言いかけてやめた。


「……お前なあ、今までと性格違いすぎないか? そんなに積極的だったか?」

「嫌なの?」

 紗季が困った顔で言った。


「いや、嫌じゃない……だけど、戸惑う」

「だって……私、ずーっとお母さんと2人暮らしで寂しくて。サキュバスだから、他人、特に男の人とは遊んじゃダメ、って言われてたし。笑ってもダメ、話しかけてもダメ。気を抜いたらフェロモンが出るよ、催淫しちゃうよ。そうなったら、男の人に襲われるよ、怖いよ。夢の中でなく、現実で襲われたら逃げられないんだよって、言われてたの」

「そうなんだ」


 ネットの情報によれば、サキュバスは悪魔――魔族だが、特に魔法が使えると言うわけではない。現実世界で男性に襲われたら、ただのかよわい女子だ。


 ふっと、Fさんの顔が脳裏に浮かぶ。なるほど、あのおっさん、それを知っているから、紗季を犯すだなどと吐かしやがったな。


 あの変態め。殺す。


「だからね、中学で好きな人ができても、何もできなかったの」

「好きな人いたんだ」

「へへ」


 ま、中学生くらいなら好きな人くらいいるか、普通。


「でね、高校生になって、お母さんが再婚して、私、兄貴と出会ったでしょ。その時私ね、あ、やさしそうだな、こんなお兄ちゃんいたら楽しいかな、妹としてかわいがってくれるかな、いろんな楽しいところ連れて行ってくれるかなって、すごく嬉しい気持ちになったんだ」

 紗季が言った。


「そうだったんだ。俺は俺で、なんてかわいいんだろう、そして美人なんだろう、こんな妹がいたら……」ハプニングなスケベ満載高校生活だ、夜のおかずに困らないと思った、とは言えないので、


「毎日楽しいだろうな、って思ったよ」と言った。

「そうなんだ! 兄貴も、私のこと、始めた見た時からかわいいって思ってたんだ! 嬉しいな!」


 紗季が笑った。


「……でも、そのあと兄貴にえっちな夢見せてしまって……。私、そんなことなるって思ってなかったから、お母さんに相談したの。そしてらお母さんから怒られて」

「なんて怒られたんだ?」

「そうやって気を抜くから、男の人の夢に出てしまうんだって。サキュバスってバレたらどうするのって。えっちな女の子と思われたら嫌われるよって、すごい怒られたの」


 あのー咲江さん、紗季の不在時に俺の夢に出て来て、ちゅぱちゅぱごっくんやったくせに、矛盾してませんかね?

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