これといった期待のない世の中に、変わったものを放つ夏の思い出の終わり。

大学一年生の夏休み、留年している姉とともに詐欺に引っ掛かった祖母の家を訪れる。
「めんとり様がまたくるから」と家に伝わる存在について口にする祖母に、二人は老いが進んだのではないかと口には出さずに目を見合わせる。

真っ黒なキャンバスを下地に、不快と郷愁のある夏らしさををセピア色の光で描いたような物語。

夏にとどまらないことを選んだ主人公が良かった。いや、良くなかったのかもしれないが。

死にたくないから生きているだけの人生だと、時に死より愛情が勝る物語がより魅力的に映る瞬間があるのかもしれない。

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