2001年8月23日(木)
安愚楽くんと、今宿のフライドチキン屋でまた会議。
いよいよ食べ物のチョイスに困り、今回はオレンジジュースだけにした。
それにしても4回の、長谷川くんの事件を若菜の事件と分けると5回の事件になるのだけど、まったくもって動機や中身がつかめない。なにかのトラブルがあったとは思うのだけど……。
「もしかしたら、僕らが知らない何者かが事件の犯人かもしれない」
安愚楽くんは、ゆっくりと言った。
「だけどそう考えると、もう手も足も出ないから……。とりあえず、いま僕らが把握している人間関係の中に、犯人がいると考えよう」
「そうね……。ここに来て、新たな登場人物が出てくる可能性はあまり考えたくないわ」
「となると、だ。すべての事件において、犯行可能な人間はある程度絞られてくる。当時アリバイがあった人間、また、当時あまりにも幼く、犯行が可能だったとは思えない人間は、はぶけばいい。
例えば工藤先生は常に怪しい行動をしているのだけど、第1の事件についてはさすがに無関係だろう。21年前の当時、先生はまだ9歳で、M高校とはなんの関りもないからね。さらに御堂さん殺害事件についても、アリバイが成立しているから、少なくとも工藤先生は御堂若菜さん殺人の実行犯ではない。
また岡部義太郎も、第2の事件のときは精神科に入院しているため、殺人事件を起こすのは無理だ。
……こんなふうに考えていくと――」
第1の事件(岡部愛子殺害)
犯人候補……岡部義太郎、北条凛
第2の事件(北条凛殺害)
犯人候補……工藤桃花
第3の事件(三段坂夏美殺害)
犯人候補……岡部義太郎、工藤桃花
第4の事件(御堂若菜殺害)
犯人候補……岡部義太郎
第4の事件・その2(長谷川幸平殺害)
犯人候補……岡部義太郎、工藤桃花
「と、まあこんな感じだろうか。動機はともかく、実行可能な人物は以上の通りだ」
「そうね、こんなところでしょう」
「長谷川くん殺害のところには、山本キキラさんも容疑者として入れられなくもないけれど……」
「それはあまり考えたくないわね。それこそ動機が思いつかないし。……それにしても岡部義太郎が、すべてにおいてうさんくさいわ」
「だけど第2の事件については少なくとも無実だ。さらに第4の事件についても、岡部義太郎がやったとなると、ちょっとよく分からないところもある。……袴田さん、岡部義太郎って、腕力はあまりなかったんだろ?」
「そうね。……怖かったけれど、力ははっきり言ってなかったわ。子供に首を絞められたみたいだって思ったもの」
「それに、君のカバンの一撃であっさりとひるんだと言っていたね。すると、いまの岡部義太郎は、優良な健康状態ではなかったようだ。こういう状態の彼が――御堂さんや長谷川くんを殺せるだろうか。いや御堂さんは女子だからまだともかく、長谷川くんはまず殺せないだろう。彼は運動神経もよかったし、中学時代は野球もやっていたそうだし……」
「――そうね、絶対に無理、とは言わないけれど……。いまの岡部義太郎に長谷川くんを殺すのは難しいかもね」
すると、工藤桃花がやっぱりくさいことになるのだけど……。
分からない。
まだ、なにかパズルのピースが欠けている気がするわ。
もう少し、推理する材料が……なにか……。
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