2001年8月7日(火)
昨日に続いて、安愚楽くんと、M高校図書室に出向く。
しかし図書室にて新発見は無し。途方に暮れて、なんとなくふたりで教室へ。
夏休み中の、がらんとした教室。
ただ、若菜の机の上に花が飾られてあった。
誰が置いたのだろう。教師か、それとも……?
そのとき、廊下に足音が響いた。
教室からそっと顔を出して覗いてみると――工藤教諭だった!
いま、彼女とはあまり顔を合わせたくない。私と安愚楽くんが事件について調べていることに気付かれたくない。
これはまずいと思ったので、私は、教室前方にある教卓の中に入り込み、安愚楽くんは掃除用具入れの中に避難した。
やがて工藤教諭が教室の中に入ってくる。
そして彼女は――深い、深いため息をついた。
「御堂さん。あなたがあんなことをするから……」
工藤教諭は、確かにそう言った。
あんなこと? どういうことだろう。
若菜がいったいなにをしたと?
「あのときと同じよ。正当防衛なの。正当防衛……ぜったいに……だけど……」
工藤教諭はそれだけ言うと、花瓶を手に取り教室を出て――
やがてすぐに戻ってきた。花瓶に水を入れてきたようだ。
「ごめんなさいね。あのひとが悪いのよ。あのひとが、あのひとが、先生の夢を壊すから……。ああでもしないと先生が疑われるでしょう……? いつだって、指をああいうふうにしないと……」
工藤教諭はそれだけ言うと、一度、手を合わせてから教室を出ていった。
……終わった。
私と安愚楽くんは、隠れていた場所から出てきて、花瓶を改めて眺める。
「この花を供えたのは、工藤先生かしら?」
「恐らくそうだろう。……意味深なことを口走っていたね」
「ええ……」
御堂さん、あなたがあんなことをするから。
あのときと同じ。正当防衛。先生の夢を壊す。指をああいうふうにしないと。
ここだけ聞くと、やっぱり若菜を殺したのは工藤教諭ではないかと思わされる。
「若菜を殺したのは、やっぱり工藤先生なの? だけど彼女にはアリバイがある……理事長室にいたという……」
「あのひとが悪い、と言っていたな。あのひと、って誰だ? あのひと、とは……」
私と安愚楽くんはふたりで考えた。
しかし答えはまるで出ない。安愚楽くんの言う通り、あのひと、とはいったい?
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