第184話大好きなてっちゃんに勝った

 そして実際に大学院へ進学するための試験の日が、やってきた。

 徹也と秀美にとって、最初で最後の勝負の日である。二人それぞれが今日この日のために、全力で勉強をしてきたのである。

 そして試験自体は無事に終わった。後は結果は神のみぞ知る……という状態であった。

 後日になって徹也と秀美は、無事に大学院へ進学するための試験は、二人ともにパスしていたことがわかって、二人は一応の安堵を覚えたが、問題は二人が試験で取った得点であった。

 そして運命の得点開示のときがやってきた。

 結果は……秀美が九十点で、徹也が八十八点であった。

 その知らせを知った秀美は、

(やった! 大好きなてっちゃんに、試験勉強で勝った! これでてっちゃんは、約束通りに、私と付き合ってくれる!)

 そう率直に、喜びを爆発させた。またその知らせを知って、負けを知ることになった徹也も、

(秀美の俺に対する気持ちは、やっぱり本物だったのだ。であるならば、手に入ることのない今日子のことを追いかけ続けるより、今俺のことを思ってくれている秀美のことを、まずは考えよう……)

 そう思って徹也は、秀美のことを抱きしめた。

 そしてその日の夜に、徹也は健に対して、大学院の試験結果が出て、秀美に二点差で点数が負けたことを伝えた上で、俺は今日子のことは諦めて、秀美と本格的に付き合うことにしたことを、徹也は健に電話で伝えた。

 健ももともとは大学院の試験を受ける際に、そういう約束であったわけだったのは、事前に徹也から聞いていたため、健はその秀美さんという女の子の気持ちを汲み取ってあげて、そうするのが現実で考えられるベストな判断だろうと、健は徹也に対して、そのようにアドバイスを話をした。

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