第177話ラルクの国立競技場公演その3

 徹也がそこまで答え終えると、秀美は、

「じゃあてっちゃんのお言葉に、ありがたく甘えちゃおっかな!」

 そう秀美は言ってくれた。徹也もそれを聞いて、

「男の方が奢って買ってあげるって言っているのだから、潔く甘えてくれないと、男の方だって結構ショックを受けたりするものだからね!」

 と、安心した顔つきを見せた。実際問題、男性側が『奢る』と言っているのに、女性側が、

「やっぱりいいよ、グッズ代は自分で出すよ」

 などと言われたら、男性側はそれを言われること自体が、結構ショックだったりするものだ。


 そうこうしているうちに、開場開始を知らせるアナウンスが、国立競技場に響き渡った。 

「開場時間になったね。早速だけれども、会場の中に入ろうか?」

 徹也がそ言うと、秀美がビックリした顔つきで、

「えっ? 早くない? コンサートがはじまるまで、まだ二時間近くあるよ」

 それを聞いた徹也は、

「いや俺ってさ。コンサートは開場時間になったらすぐに会場の中に入って、会場の中でまったりと開演を待つタイプの人間なんだよね」

 という自論を徹也は話をした。それを聞いた秀美は、納得した様子で、

「うん。てっちゃんがそう言うなら、それならじゃあ会場の中へ入ろうね!」

 と言って、二人は入口へと向かった。

 徹也は実際に会場に入る前に秀美に、

「会場に入る前に、ちょっと注意事項としてね……」

 と言って、次のことを注意事項として、秀美に話して、そこのところは大丈夫かと、徹也は秀美にたずねた。

「一応席はアリーナだから、それで国立競技場は天然芝の保護の関係で、会場に持ち込める飲み物は、純粋なミネラルウォーター『だけ』なのだけれども、そこのところはお前さん、大丈夫かい?」

 すると秀美は嬉しそうに、

「うん! その辺りはちゃんと調べてきたよ!」

と返事を返した。すると秀美は続けて、逆に徹也に対して、次のような質問を投げかけてきた。

「ところで橋部さんは、今回のこの公演には来ないの?」

「いや、今日子は今日はどうしても休みが取れないらしくて、今日子は明日の公演に行くらしいのだよね」

「そうだったんだね。ところで席はどの辺りなのかな? てっちゃん」

 秀美にそう聞かれた徹也は、

「チケットにはアリーナ席って書かれているけど、これだけの競争倍率の単発公演だからね。おそらくかなり後ろの方だと思うけれどね」

 徹也はそう秀美に言って、まず会場に設置されている座席の図を頼りに……一応目星は付けるが、細かい位置は会場のスタッフに聞くことにした。

 実際に着席する席の場所がわかって、俺と秀美はビックリ仰天した、ステージから見て、アリーナ席の、しかも前から四列目だったのである。

「てっちゃん凄い! 前から四列目だよ。これ! バナナとか、投げるピックとか、取れるよ!」

秀美が興奮するのも、無理はなかった。

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