第87話ソーシャルワーカーの先生との面談

 雪絵は慶応SFCに通いはじめてから、大学一年生の夏休みが終わった辺りから、普段通っている慶応病院の精神科で、主治医の診察が終わった後で、ソーシャルワーカーの先生との面談も、入れるようになった。

 ソーシャルワーカーの先生との面談は、具体的には今後大学生活を送っていくことに対しての、日々受けるストレスや、感情の起伏に対しての対処法や、対人関係などの感覚を取り戻すのが、メインの目的でもあった。

 雪絵の担当となったソーシャルワーカーの先生は『森下』先生という女性の先生で、見た感じはとても穏やかな印象を受ける先生だったので、雪絵はそこのところは率直に、安心感を覚えた。

 ソーシャルワーカーの先生との面談がはじまってから三回目のときに、雪絵はソーシャルワーカーの森下先生から、一枚の用紙を渡された。

「この用紙なのですけれど、一日を時間おきに、何をやったかを記述していく用紙なのですね。まあ時間通りに正確に書き過ぎる必要性はもちろんないですし、また書くこと自体が辛くなってきましたら、書くのを止めてもらっても、全然構わないですから……」

 雪絵はソーシャルワーカーの森下先生からは、そうは言われたものの、雪絵は素直に、渡されたその用紙に、一日の出来事をこと細かく記述していったのだが、大学に通っている最中と、土日のアルバイトの最中は、特に変わった変化なども起きないがため、書く内容として変化があるとすれば、夜の眠りぐらいであった。

 四回目の面談のときに、前回の面談のときに渡された用紙の記述を、ほぼしっかりと正確に、時間単位できっちりと書いてきた雪絵に対して、ソーシャルワーカーの森下先生は、

「凄いですね。ここまできっちりしっかりと、正確に書いてこられる患者さんは、なかなかいらっしゃらないですよ!」

 森下先生はそう言って、雪絵のことを褒めたし、それに対して雪絵の方も、悪い気は全くと言って良いほど、しなかった。

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