第79話園里の自作パソコンその3
日曜日、園里と今日子は秋葉原駅で待ち合わせをして、雪絵がアルバイトをしているというパソコンショップにやってきた。秋葉原の大通りから脇へ抜けて、自作用パーツやジャンク品などが売られている店たち……また多数のメイド喫茶のチラシ配りをなんとかくぐり抜けて、なんとか雪絵が働いている方の店に到着した。
「秋葉原って、いつからこんなに混雑するようになったのよ? それと秋葉原って、そもそもは電気街じゃなかったの? 何なのよこのメイド喫茶の、チラシ配りの軍団は!」
と、文句を垂れる園里に今日子は、
「今日は日曜日だから、きっと街に活気があるんだよ!」
と園里を優しくなだめるように言った。
雪絵はこのパソコンショップに採用された当初は、大通りに面しているその通称『ブラックゲマゲマ団の塔』で働いていたのだが、別の店舗でグラフィックボード販売の階で欠員が出ていて、仕事を一通り覚えた辺りでそっちに回されたのだと、今日子は雪絵から事前に聞かされていた。
雪絵が働いているグラフィックボード売り場の階は三階だという。店にエレベーターは見当たらず、狭い階段を上がって、二人は三階へと出向く。
三階に着いた途端に『初音ミク』の声で、
「いらっしゃいませ! ご主人様、お嬢様!」という声……というより音が聞こえた。
「ああ……」と雪絵は無愛想に、園里と今日子の二人を出迎えた。
「ちょっと雪絵。あなたそんな無愛想でいつも接客しているの? そんなことしていたら、いずれクビ切られるわよ! 一応接客業なんだからさ!」
すると雪絵は園里に、こう返事を返した。
「こういうの『ツンデレ』って言うらしいんだけども……実際そういうのが好きなお客さんも……一定数いるから……」
それで成り立つの接客業が? と園里は正直に言ってそう思ったが、それはあえて口に出すことを止めた。
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