第50話ビリヤードその2

 次に徹也はビリヤードと物理が、どう関わっているのかを、次のように秀美に対して、説明をしはじめた。

「この手玉をキューではじいた瞬間に、キュー、手玉、的球、それにビリヤード台全体にセンサーが付いていたとして、それを無線LANか何かでスーパーコンピューター……少し古くはなったけれども『地球シュミレーター』ぐらいの計算能力があるスパコンなら、十分だと思うけれども、キューで手玉をはじいた瞬間に、的球が上手くポケットに入って、なおかつ手玉がどこかのポケットに入らないかどうかっていうのは、もうキューで手玉をはじいた瞬間に、わかってしまっているんだ。この『物体の運動の未来は、力を与えた瞬間に、もうどうなるかわかっている』っていうことを教えるのに一番最適な教材が、ビリヤードってことなのね」

 しかし徹也は少し困った顔つきを見せて、こう言った。

「ただそうは言ったけれども、実際問題としてビリヤードをやっている数学や物理の先生は、あくまでもニュートン力学では、手玉とぶつかった的玉の未来は予測出来るって表現はするにはするけれども、実際には完全には予測は出来ないと言われているのね」

 徹也は台に球を並べながら、次のように言った。

「ビリヤードってのは『ブレイク』をした後っていうのは、もう二度と同じ玉の位置同士になることは、まずないのね」

徹也の物理が関するような説明が続く。

「もっと言ってしまうと、今俺がキューの先端に滑り止めの粉を付けただろう? この滑り止めの粉の粒子の数が一つ違うだけでも、演算の計算式や結果は全く異なってしまうからね」

 徹也の物理的な説明は、まだ続いた。

「ニュートン力学に従って予測が出来るのなら、数学や物理の先生方は、ビリヤードなんてやりに来なかったりする。未来が『予測が出来ない』という醍醐味があるから、ビリヤードって面白いのね」

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