第43話お互いの名前を教えあう

 そこまで愚痴を言った徹也だが、徹也の愚痴はもう少し続く。

「あげく俺が持っているこの『五十二番遺伝子障がい』のおかげで、俺は家族からも『ゲテモノ』扱いされているからね」

 そこまでずっと徹也の話を聞いていたその女の子は、

「あの……もしよろしかったら、お名前を教えて頂けませんか?」

 と、かなり物腰が低そうに言うので、徹也は、

「俺は、保科徹也っていうのね」

 そう答えると、その女の子も、

「私、岩瀬秀美っていいます」

 そう自分の名前を徹也に告げた。それを聞いた徹也は、

「ああ『秀美』さんね」

 と言った。秀美という女の子は続けて、

「普段は友達たちから、なんて言われているのですか? あだ名とか?」

 秀美という女の子がそう言ってきたので、徹也は、

「ああそのことかい? 俺は徹也だから『てっちゃん』って呼ばれることが、多いかな?」

「じゃあこれからは『てっちゃん』って、呼んでも良いでしょうか? でももし馴れ馴れしく聞こえてしまったりしましたら、ごめんなさいなのですけれども……」

 それを聞いた徹也は、秀美に気を使わせないようにと思って、

「別に好きにしなよ。そんなことで俺は怒ったりはしないよ」

 秀美に気を使わずに勉強を続ける徹也を見て、秀美は図書館から帰ろうとした。その帰り際に秀美が、

「てっちゃん。今度物理教えてくれませんか?」

 そう秀美は徹也に言った。徹也はあえて無愛想に、

「俺の気が向いたらね」

 とだけ、徹也は秀美にそう言った。

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