第35話昼食時に重森とその4

 意外な質問だったが、雪絵は正直に答えた。

「SFCって工学部とかじゃないのに……プログラミングとかコンピューター関係の勉強が出来るって……聞いていたから……私中学のときからパソコンでいろいろ遊んでいて……ゲームのエミュレーターを改造して遊んでみたり……プログラミングも……その頃にはもう独学でやってたの……」

「その……。C言語とか、あるいはVBとかを、独学ってこと?」

「うん……。たいしたレベルじゃないけれども……」

 さすがにハッキング大会で上位の成績を、中学の時点で収めていたことは、重森を引かせるだろうと思って、雪絵はそのことには触れなかった。

 雪絵も少しは会話を長引かせようと、次のような質問を重森にしてみた。

「重森君はどうして……SFCに?」

「ああ俺はね『人間』ってものを深く学んでみたいと思って、ここ慶応のSFCに入学したのね。何ていうんだろう? 俺が出た高校の先輩で、やっぱりSFCに入った先輩がいて、ああもうその先輩はSFCを卒業しているんだけれども、その先輩の合格体験記に『クローン人間を作る技術を学ぶだけじゃなく、クローン技術で生まれた人間の心理も勉強出来る』って書かれていたからさ。その合格体験記を読んで、それで興味が沸いてきて、SFCを受験したのね」

(そう……なんだ……そんな考え方も……あったのね……)

 そう雪絵は重森の話を聞いて、感心した。すると今度は重森が雪絵に、

「雪絵さんって、その……。名前だけを聞くとやっぱり、冬の季節に生まれたのかな?」

 それを聞いた雪絵は重森に、

「うん……後でお母さんに聞いたら……私が生まれた日に……なんか雪がしんしんと降っていたみたいで……その情景がとてもきれいな絵になっていたから……私に『雪絵』って名前を……つけたんだって……」

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