第25話 ティメオさんとご対面

 大きな白い岩を切り抜き、精霊の本がビッシリと並べられた建物前に七人は立っていた。

 建物の方を向いてアメリアさん、マリアさん、カナ君そしてハル君が立ち前にいる三人を見つめている。その三人もアメリアさん達を見つめていた。

 一人は男性で白いマントに身を包み、少し長めの髪を後ろで束ねている。その横には白いドレスを着た女性が凛々しい顔つきで寄り添っていた。そしてやや離れて、レモン色のコートを纏った男が立っていた。この世界の特徴なのか、いずれも金髪で緑色の瞳。

 「きゅあー!」

 その緊迫していると思われるさなか、私は大きな悲鳴を上げ颯爽と――いや、マヌケにも放り込まれるように地面に降り立った?

 「いたたたた……」

 もうちょっとこう、優しく下ろしてくれないかな……。

 「ルナ! あなた無事でしたのね! ごめんなさいね。手を離してしまって!」

 私がお尻を擦っていると、よかったとマリアさんが近づいて来た。

 「よかった無事で! 僕探しに行こうかと思っていたんだけど……」

 「色々面倒な事になって、すぐに行けなくてな」

 そう言いながらハル君とカナ君も駆け寄って来てくれた。

 「皆、よかった~」

 『タフィー、その者はどうしたのです?』

 『そこの人間の仲間みたいだし連れて来た』

 へ? 仲間だから連れて来ただって!?

 私は振り向いた。タフィーくんの声を掛けたのは、ドレスを着た女性だった。

 パートナーという話は? あれ嘘? そりゃそうか、会って突然パートナーになるなんてないよね……。からかわれただけだったのね!

 「なるほど。この者が持って隠れていましたか」

 気が付けばレモン色のマントの男が近づいてきていた。そしてスッと精霊の本を奪い取っていた。

 「え? ちょっと何するのよ! 返して!」

 私が慌てて言うも男は、白いマントの男に精霊の本を渡した。それには皆も唖然として見ている。

 どうしよう……。チラッとアメリアさんを見れば青ざめている。

 「ティメオ様。どうぞ」

 「ありがとう。クレタス」

 あの白いマントの人がティメオさんだった!! あぁどうしたら……。

 「ご、ごめんなさい。アメリアさん……」

 私が謝るとアメリアさんは首を横に振った。

 もしかしてこれって、かなり悪い状況? 精霊の本に入れられちゃう?

 そうだ! おじいちゃんは?

 私はおじいちゃんの存在を思い出し辺りを見渡すも見当たらない。バラバラになったのね、私達……。一番最悪のパターンかも。

 『なあ、どういう状況なんだ?』

 『この者達が今度はリアムと一緒に来たと言っています』

 タフィーくんが聞くと女性が答えた。って、何も状況を知らなかったんだ。

 『ふ~ん。で、確認はしたの?』

 「この者が言っている事は嘘でしょう。する訳がありません」

 タフィーくんの質問に今度は、クレタスさんが答える。

 「ねえ、あの子どうしたの?」

 ボソッとマリアさんは聞いてきた。

 あの子――タフィーくんの事ね。どうしたのと言われてもね……。

 『なあ、なんでヌガーがその結界の中に入っている?』

 マリアさんに答えようとして、タフィーくんの言葉に驚いて見てみると、白いドレスの女性のすぐ横に、膝を抱えて顔を埋めているヌガーさんの姿があった!

 嘘! もしかして捕まった? たしか精霊の方が強い世界だよね? これから私達どうなるの?

 『それはヌガーがアメリアに加担したからです』

 『もう一つ聞くが、エリーヌがいるか確認はしたんだよな?』

 「しておりません」

 クレタスさんが答えるとタフィーくんがムッとした顔つきになる。

 エリーヌさんって確かおばあちゃんの名前よね? え? これ、どういう状況?

 『俺様は知ろよって言ったよな!』

 『あなたが口を挟む事ではありません!』

 『ブレッツ……精霊王よ。人間のいざこざに精霊が巻き込まれたんだ。確認ぐらいはさせろよ!』

 「え! あの人が精霊王! って、もしかして精霊の中で一番偉い精霊!?」

 大きさは普通の人間。見た目も透き通ってない。ヌガーさんやタフィーくんみたいにかわいさはない。大人の女性に見えた! って、女の精霊なら女王じゃないの? まあ、呼び方なんてどっちでもいいか……。

 「そうみたいですのよ。王だというから男性かと思っておりましたわ」

 マリアさんも私と同じく思ったみたい。だよね。

 「ところでさ、お前と一緒に来た精霊はどっちの味方?」

 「……さあ?」

 私はカナ君に言われ、タフィーくんを見て答えた。正直私にはわかりません。そもそも何がしたかったのかもわからない。

 「あ、そう言えば、おじいちゃんは? やっぱりバラバラになっちゃったの?」

 「おばあちゃんを迎えに行ったよ」

 「うんで、ロサーノさんはわかんない」

 ハル君とカナ君が答えてくれた。おじいちゃんとは一緒だった事は一緒だったんだ。ロサーノさんの方が行方不明なのね。

 「おじいちゃん、皆に説明してくれなかったの?」

 「いや、別れた後に出会ちゃって……」

 「全然話が通じないだよな……」

 「石頭ですわよね」

 どうやら間が悪く、いなくなった後に出会ったのね。

 「この者達は本の中に一旦閉じ込めた方が宜しいと思いますが……」

 クレタスさんが何と凄い提案をしてきた!

 おじいちゃん、早く戻って来て――!

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