猿ノ章
中にいた男は、扉が開く音を聞くと、台を拭いてる手を止め、そのにこやかな表情を崩さずにこちらを見た。千景の視界と、千里眼の視界が重なり合う、男と千景の間には、微妙な距離感がある、男は、千景の頭から足元までなぞる様に見てから、先に口を開いた。
「どちら様でしょうか?」男は体勢を保ったまま、口だけ動かして千景に語りかける。千景は何も答えず男の目を
二人の腹の探り合いをしているような、沈黙の時間が流れる。先に動いたのは、男の方であった、口元が動いたかと思うと、男の体から白い触手なようなものが浮き出て、壁に張り付いている少女達の死体の方に伸びて行き、手足に
男の職種は、
「ゴルビスがどのような者を、飼っているのか直接見に来た」
「飼う? はっ!」シンツーは、鼻で笑った。そして「我々は共犯者ですよ、私達の商売を彼が
「ゴルビスとお前達が共犯者?」
「そうです、ええ、そうですとも、私達は実に趣味が合うんです、こういうことはですね、一人で楽しむよりも気が合うもの同士で楽しんだがほうが、何倍も楽しいんです、どうです? 美しいでしょ」シンツーは、誇らしげに、壁に貼り付けにされた少女達の死体を指さした。
「わからないね、わかりたくもない」
「はっ! 芸術がわからない下等な猿が!」シンツーは鼻で笑いながら千景を
「どうです! 苦しめて苦しめて、苦しめた分だけ、少女達の死体から大きな声が出るんです。私達の作品素晴らしいでしょー! この歌声のよさわかります? わかりませんよね! そんな芸術が理解出来ない猿は猿らしく、無様に死んでください!」
シンツーが両手を突き出すと、壁に貼り付けられた少女達が、
シンツーは、それを見て、すぐさま、ゆったりとしたローブの中に手を入れ、千景に向かって飛び針を投げてきたが、それを千景は、いとも簡単に弾き返す。恍惚の表情があからさまに不快な表情に変わった。そして、台に手を掛け、一気に下に降りる階段の方に飛んだ。
死体の補充か、下の階にいる少女達が殺される、猿、猿、猿
「そんなに俺の事を猿というのなら、俺の猿仲間を連れてきてやる高位忍術『口寄せ
白と黒と赤の炎をそれぞれ身に纏った猿達が、目にも止まらぬ速さで、階段を下に降りようとするシンツーに襲い掛かる。シンツーがその姿を確認するために一瞬振り返ったときにはもう全てが遅かった。
『止』黒の止め猿がシンツーの動きを止める立方体の結界を作り出し動きを止め。
『絞』白の絞め猿がシンツーの首を絞め。
『殺』赤の
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