あの日交わした契約を私は決して忘れない 4/7
「本当に大丈夫ですから」
半ば逃げるように歩き去ろうとする私の背中に、おじさんの叫び声が響く。
「あ、おい!あぶねえでよ!!」
「え?あっ!」
突然太ももに何かがぶつかってきた?
上半身だけが先に行こうとするせいで前につんのめってしまう。
パンツ見えたかな?もうめっちゃ恥ずかしい。
慌てておじさんが駆け寄ってくるのが分かる。
「でぇじょうぶかぁ?そこガードレールあんだあ」
ガードレール?さっきからずっと車なんて通ってないじゃない。税金の無駄!
「ほれ、落としたで」
私が落とした物をおじさんが拾って手に当ててくれる。それを受け取って、立ち上がる。
「ありがとうございます」
「やっぱ危ねぇから送るよって。どこさ行くんだぁ」
「……」
まずい。これじゃ離してくれなそう。どうしよう……。
「たぶちさん。誰だ?その子」
また別の声が離れた所から聞こえてきた。今近くに居る人よりは若い男の人っぽい。ただ声から警戒がにじみ出ていた。
こっちはこっちで田舎特有の余所者嫌いなタイプかぁ。もうこうなったら……。
「お、いいぬまのせがれか。ちょうど良かった。この子危ねぇから送ろうかと思ってよ」
「それよりたぶちさん、親父が探してたよ。次こそ勝つんだって息巻いてたよ。弱いくせに負けず嫌いなんだから、あの人」
「あー、今行こうとしてたさー。あれだろ?また変な本読んで必勝法なんて言ってれ?」
「はっきり言ってやってよ。弱いくせに自分で考えないから成長しないんだって」
なんかこっちを無視して話しだした。チャンス!今しかない!
私は森のある方に向かって一気に駆け出した。後ろから叫び声がしたけど無視した。
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