インセンティブ

次の日はバイトだが気にせず眼鏡とお散歩に行った。

「自分で描いた」らしい泣きぼくろは最初からそこにあったかの様に顔に馴染んでいたがそれを直接言ったら鼻を高くしそうで、それはそれで何か癪なので言わないでおいた。

明日のバイト。講師なので授業の予習などは欠かせないのだが、気にしない。

休日に仕事は持ち込まないようにしている。

待ち合わせは音楽と

芸術と

自然と

都会が入り混じった街。

綺麗だ。

綺麗

生々しさがまるでない。

濁った僕の目には街を歩く全ての人間が薄っぺらく、不気味に見えた。

それは鏡に映る自分も同じなのだが。

全ての人間が感情に溢れているように見えるが、何か

「魂」のような根本的な何かが欠如しているように見えた。

クオリアの無い

「哲学的ゾンビ」

深い理解をしていなかった哲学者の思考実験を直感で理解した。

嫌悪感が僕の身体を蝕み、吐きそうなので移動することにした。

次の街は都会特有のお洒落さと、そこにいる人間の汚らしさが上手く調和された街。

歩きなれた街。

これだ。落ち着く。

汚らしい女も、強面のおっさんも、勘違いしたSNSユーザーも

全員が絶妙なバランスでこの街を形作っている。

海鮮丼を買って

クーラーを求めマンションへ直行した。

涼しい

美味い

気持ち良い。

この幸福感は

明日へのインセンティブだ。

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