いい女
朝、煙草を買った。
正直飽き始めている紫色の8ミリだ。
「メンソールが下品に付いてるから喉痛くなるんだよねェー、これ。」独り言を言いながら喫煙所でペリペリと包みを剥がす。
新しい煙草
「これから吸うぞ!」という不思議な高揚感
中の銀紙を丁寧に破いて匂いを嗅ぐ。癖。
下品で強いメンソールの香りが鼻腔に広がり、ガツンと脳を叩く。
シュッ
シュッ
ジッ
「ふぅ。」と溜息と共に煙が口を抜ける。
ボーっと30分音楽を聴きながら煙草を吸い続ける時間がある。
僕が作った「Sunday morning mix」プレイリストからシャッフルで流れる曲に身を任せる。
Tofubeats、チェットベイカー、Joji
柔らかく優しい音楽が煙草の煙の様にユラユラと僕の身体を揺らす。
落ち着いた時間だけがゆったりと流れる「
『めくるめくミラーボール乗って、水星にでも旅に出ようか。』-Tofubeats「水星」
気づけば灰皿には吸い殻が砂時計の砂の様に浪費した時間を示していた。
恐る恐る本数を数える。
「に…し…ろ…や…いち」
あと9本
この30分で11本吸っていた。
流石にヤバイな。まだ、午前中。
ふと、俗に「都合のいい女」と言われる女性は煙草の様な物だと思った。
求めれば
求めるだけ。
吸い終わったら
空き箱はクシャ
吸い殻はポイ
「都合の良い」女性。
悲しすぎないか。そんなの。
悲しすぎないだろうか。
不甲斐ない僕にはそんな誰かが捨てた吸い殻の傷を癒す事も出来ない。
また、ふと考えが浮かんだ
都合のいい女は決して「いい女」ではない
という事。
煙草は吸えど
吸えど
満足しない。
「良い女」とはハードドラッグの様な女性の事なのではないだろうか。
オーバードーズ。
死の底の底まで一瞬で手を引いてしまい、僕もそれを望んで。
オーバードーズ、バッドトリップ
決して気持ちの良い物ではないが求めているのはその先の物。
満足感と幸福感をその身に満遍なく感じ、生命としての活動を終える。
僕はハードドラッグの様な女性が好きだ。
あと6本。
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