続編
続編前の小話
【前書き】
本編を最後までお読みいただきありがとうございます。ここから先では本編終了後の続編を引き続き連載いたします。
以下小話になります。
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自分のクラスに戻ってきた時、友人たちが一斉にこちらを見てきた。
皆、期待と不安に満ちた目をしており、私が話し出すのを待っているようだ。
私はニヤけそうな顔が抑えきれずに、バターが熱で溶けてしまった様にデレッとだらしない笑みを浮かべてしまった。
「アヤ! やったのね!?」
「エヘッエヘヘへ…」
「ちょっとー! 良かったじゃなーい!」
抑え込もうとしても喜びが溢れ出してきてしまう。少々不気味な笑い方になってしまったが大目に見てくれ。
私のその反応で結果がわかったらしい。
リンとユカは自分のことのように喜んでくれて私にハグをかましてきた。
私は二人に抱きしめられながら「先輩も同じ気持ちだって…き、キスされちゃった…」と二人にだけ聞こえるように教えた。
「もうアヤったらピュアっ娘なんだからー」
「かーわーいーいー」
またリンにピュアっ娘って言われた。だからなんなのその二つ名。
ユカもニヤニヤしながら私の頬を突くのを止めてくれ。
二人にからかわれていると、いつの間にか傍に沢渡君が来てて「良かったねアヤちゃん! おめでとう!」といつもの太陽のような笑顔で一緒に祝ってくれていた。
さっきは縁起でもない事を言ってきたけど、こういう所もあるから憎めないんだよね。
まさか先輩とお付き合いできるようになれるなんて思っていなかった私は浮かれていた。
しかし、私は彼氏イナイ歴=年齢だ。
転生前の記憶があると言っても、本日舞台が終わった乙女ゲームの内容と前世の自分が見聞きしてきた情報がほんのり思い出せる程度だ。
だから前世の自分がどんな人間で、どういう人生を送ってきたかなんて全然わからない。
つまり、田端あやめになる前の私が男女交際をしたことがあるのかもわからないということだ。
メディアや人の口から聞いた噂話の知識しかないのである。
男女交際というのは何をどうすればいいの?
世間一般の交際だと、手を繋いでデートしたりキスしたりしていて、そのうち大人な関係になっていく。人によってそのペースは違うとはいうが、最終的に行き着く先は私だって知っている。
手を繋ぐのもキスをするのもハグも全部経験した。デートはその内するとして……最終的には大人な関係に行き着くのだろうか?
……真面目でストイックな先輩が?
男の怖さを延々と語ってきた先輩が?
無防備だと叱りつけてきたあの先輩が?
私のエセ花魁写真を破廉恥だってお叱りの電話をしてきた先輩が???
…………うーん…
「……先輩は結婚するまでそういう事はしなさそうだな」
思っていたことが口から漏れてしまった。
ポツリと私がそう呟くと、ユカとリン、そして沢渡君が私をぎょっとした目で見てきた。
…なにどうしたの?
「アヤちゃん! それはな…ムグ」
「沢渡、あんたは黙ってなさい」
「アヤ、あんたは余計なことしないで、橘先輩に任せときなさい」
「え? なにどういうこと?」
リンが意味深なことを言ってきた。何かを言いかけた沢渡君の口元をユカが抑え込んでいるし、一体何なんだ。
問い詰めても教えてくれないし、私は訳が分からなかった。
ちょっと! 恋愛初心者の私に少し位アドバイスをしておくれよ!
「あやめちゃん! 良かったね!」
「ありがとう花恋ちゃん。ね、ねぇ…お付き合いってさ…」
「本橋ちゃーん、アヤには何も教えないであげてー。自分で体験して学ばないと意味がないから」
「うんわかった」
「!? なにが!?」
私の告白の成功を祝ってくれた花恋ちゃんまで私に意地悪をする。
どういうことだよ〜! みんな応援してくれてるんじゃなかったの?
その後、私の偏った思い込みと無条件の信用によって、先輩に苦行を強いることになるとは全く予想しなかったのである。
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