第64話 乱入者
「……美味だった」
私がお団子を食べ終えた後、クラウドが満足げに呟いた。お皿のわらび餅はすっかり完食されている。
「お気に召したのなら何よりです」
「クラウド、めっちゃうまそうに食ってたな」
「事実、美味だったからな」
少女漫画とかならここで、『口元、ついてるぞ』『きゃ、私ったら!』みたいなシーンがあるんだけど二人とも食べ方がめっちゃ綺麗なのでそんなことにはならない。残念だ!
レオンかクラウドのそんなお茶目な一面を期待した私が馬鹿でした!
そんな事を考えていた私は気がつかなかった、いつの間にか、私の隣に奴が座っていた事に。
直ぐ反応したレオン、一瞬遅れてクラウドが私の隣を睨む。
「そぉんな怖い顔しなさんな、おにーさん達。綺麗な顔が台無しよぉ?」
おちゃらけたような、間延びした声にぎょっとして視線を向けるとそこにはさっき距離を置いたはずの忍べてない忍者、修二がいた。
「…今すぐその方から離れろ」
ギっとレオンが修二を睨み付ける。いつでも反応できるように、後ろの腰辺りに腕を回している。恐らくナイフとか武器的な物をそこに隠しているのだろう。
クラウドも同じ様に、最初からずっと装備していた剣に手をかけて椅子から腰を浮かせている。
「やだなー、俺まだなぁんもしてないのに。おにーさん達こわーい」
けらけらと笑いながら修二は馴れ馴れしく私の肩に手を置いた。
「……何か、ご用ですか?」
肩に置かれた手をぱしんと軽く払い除けてじっと視線を向ける。
払い除けた手を大袈裟に擦りながら修二はにやりと笑う。
「いいねぇ、威勢のいい子、俺好きだよ?」
「ご冗談を」
にっこりと笑って見せると、修二は面白そうに口元に笑みを浮かべた、しかし目は私を観察するように細められる。
「君さ、前に女の子を助けてチンピラに絡まれたことあるよね。そん時に、髪の長い男が追っ払ったことあるでしょ?」
修二は以前、私が東の国に来たときの事を行っているらしい。
心当たりのあるレオンがピクリと反応する。
確かに少し騒がしくしてしまったが、それをこの人は見ていたらしい。
「あれ、俺の幼馴染なんだけどさ。君の事、気になっちゃったるみたいなんだよねぇ…で、よかったらあいつに会ってあげてくれない?」
………は?
怪訝な顔をする私に修二は拝むように手を合わせて頭を下げる。
「ね、お願い!もちろんそっちのおにーさん達も一緒でいいからさ」
「断る」
口を開いたのはクラウドだった。
「私達は忙しい、失礼する」
クラウドは立ち上がると、私を椅子から立たせて出口に向かう。お茶代はいつの間にかレオンが支払っていた。
ごめん、後で私の分払うから!
「……『鬼』を召喚したヤツの事、知りたくなーい?」
すれ違い様に修二が変わらぬ口調で問い掛ける。
今、鬼っていった?
私達三人は修二を振り返る。
異様な空気に店の中がざわつき始めていた。これ以上此処にいるのはお店の迷惑になる。
修二もそれを察したのか出口に向かって歩く。
「あいつに会ってくれるなら、それも教えてあげるよ」
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