魔女が死なない日 - 2
特に用途も考えず、魔女らしい草木を植えに植えた{任意の土地}、その中央の屋敷に{任意の悪い魔女}は住んでいる。
好きな魔術は「変質」と「融合」、嫌いな言葉は「常識」と「正統」、好きでも嫌いでもない食べ物は「
最近の研究テーマは「特殊な
魔女狩りは人を人でなくし、人の尊厳も権利も剥奪する制度だから、魔女狩りの対象になった「新米魔女」は、人の社会を抜けざるを得ない。先輩魔女である{任意の悪い魔女}が誘えば簡単に着いて来る。
そうして、何の力もない名ばかり魔女は、本物の魔女にとって、安全で安定的かつ無料の優良素材となる。火炙りにするより余程有益だ。
今の所、{任意の悪い魔女}の研究は「特定の条件下での魔素循環状態に於ける第一法則の実証」を並べる状況だが、思い付く限りの条件で試行を繰り返せば、その
「ううん。一見出力量は増えてるけど、入力時の初期
『これ、回路内の脂肪か何かが燃えて魔素に変換されただけじゃないコン?』
魔女の呟きに答える声は、彼女が左手を影絵のキツネに構え、パクパクと(目の部分を)開閉させながら発する、彼女自身の裏声だ。
「そうねえ。栄養状態の良いお貴族様は不純物が多くて困るわ」
『栄養失調の貧民より魔素の通りは良いけどコン』
「回路を組む前に、お貴族様と貧民を
『多分、悪いとこ取りになると思うコン』
「やる前から諦めるのは真摯でないわ」
手元の素材で組むには少々数が足りないので、また調達してくることになる。とは言え、この時代、使える素材は潤沢だ。
もしこの実験が成功すれば、世界の魔素関連技術は一気に革命される。きっと皆幸せになるだろう。そう{任意の悪い魔女}はキツネくんに向けて微笑んだ。
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