08.少しずつ少しずつ



――結局、親衛隊はどうなったのか?



 これは後日談。


 鈴理先輩に完膚なきまで叩きのめされた親衛隊は(でも彼女に叩きのめされて彼等は少しならず幸せそうだった。M族恐るべし) 、彼女の命令で名前を改名させられたそうだ。『鈴理さまお守り隊』から『鈴理さま見守り隊』となった彼等は、俺と先輩の関係には口出ししない。快く仲を見守るよう強いたらしい。


 ま、彼等は俺と鈴理先輩の関係を快く思っていない上に、仲を引き裂くことを諦めていない。

 俺が登校してくると親衛隊隊長と副隊長に指差されて言われた。


「お前とこれからも関わっていくからな!」


「君と関われば鈴理さんと話せるだけでなく、痛めつけられるという美味しいことも知ったからな!」


 ……仲を引き裂くことを諦めていないというより、先輩と美味しい関わりを持てる味を占めてしまったらしい。

 このことで学んだことは、Mって厄介な族だってこと。「またなじられたい」とか「蹴られたい」とか妙な事を口走っていた。


 俺的にもう係わりたくない奴等だ。切に。


 だけどさ、悪いことばっかりじゃなかったんだ。親衛隊と騒動を起こしたその夜、先輩からLINEでメッセージをもらった。


 顔文字も絵文字も無いそのメッセージには淡々とこう綴られている。



『今日はありがとう。親衛隊のことも、勿論そうだが空の気持ちがとても嬉しかった。今日はゆっくり休め。恐い思いをしたんだ、疲れていると思う。返信はいいから。恐くなったら遠慮なく電話しろ。おやすみ』



 やだもう、イケメンなの俺の彼女! LINEで、こんなにも気遣われている俺って立場ねぇんだけど!


 反面、凄く嬉しかった。その夜は本当に疲れていたから返信できなかったけど、凄く凄く嬉しかった。


 鈴理先輩と知り合って日は浅い、恋人の日はもっと浅い。



 だけど俺の中で確実に何かが変わってきている。現に今の俺は前の俺のように、こんな気持ちを抱いてはいなかった。先輩に会いたいなって。早く今日も会いたいなって。



 前略、不況に抗い働いている父さん、母さん。


 貴方の息子、豊福空は出来たばかりの肉食系女子お嬢様に対する気持ちが少しずつ変わってきているようです。




「トラウマのことをスンナリ話せる人なんて今までいなかったのにな……鈴理先輩って不思議な人っす」




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