Monolog..



「ついついにやけちゃうよ。なんだか微笑ましくてね。ぶっきらぼうな不良少年が、花言葉だなんて粋なことするんだもん。可愛いなって」

 アルビノの青年は揺り椅子を揺らしながら、むず痒そうに両腕で胸元をぎゅっと締め付けている。

「君も今は何ともいえない表情をしているよ。面白いから、そこの小川に自分の顔を映して見てごらんよ」


 ぴちゃっ。


 ぴちゃっ。


 奇妙な間が続いた。

「ごめん、怒らせちゃったかな」

 誰でも面白い顔などと言われたら腹を立てるだろう。

 だが彼が言っていることも、わからなくもない。この甘酸っぱい物語を聞いては、つい表情が緩んでしまう。にやけてしまいそうな衝動を抑えて口元を引き結んだ結果、面白い顔ができあがっていたのだろう。

 アルビノの青年は反省したように肩を落として、真っ白な肌を一層青くした。神秘的な、だが病的な彼を眺めていると、急に心配になった。あまりにも細い体や、青白い肌。このまま消えて無くなってしまいそうな弱々しい存在。転んだりでもしたら、たちまち粉々に砕けて壊れるに違いない。

 そんな心配をよそに、青年はぱっと顔を上げた。そこに浮かぶ表情は、満開の花のように明るかった。

「そうだ! 君には特別なお話があるんだ。まだ時間はありそうだから、よかったら続けて聞いていきなよ」

 心配は無用なようだ。病的な青年からは無限のパワーが溢れ出していた。

「次のお話もまた、ちょっと甘酸っぱいお話だよ。でも、甘いような切ないような。応援したくなるよなお話かな! あ、足痺れたりしていないかい? もう一冊本を積んで高さをだそうか。この箱庭に来てから、意外と時間経ってるからね。ほら」

 そう言ってアルビノの青年は、手元にあった古書を差し出した。できればもう少し柔らかいものがいいのだが、ここに代用できるものはなさそうだ。仕方なく彼の厚意をありがたく受け取った。

「準備はいいかい? ああ、でもリラックスしてね。季節は秋。春に咲く桜も美しいけれど、秋の桜もなかなか素敵なんだ」

 秋の桜とはどんな花なのだろうか。

 疑問に思い首を傾げると、その様子を見た青年が楽しそうに話し始めた。

「秋にも桜はあるんだよ。もう一つの桜がね」

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