第21 お話を聞いたあと

「あああああああああああああああああああ

じにだいー」

俺が春と出会った経緯を話された直後恥ずかしさのあまり死にたくなっていた。

「あの…この事誰にも話してないよな?」

こんなの聞かれたら不登校になるぞ。

「大丈夫、話してないよ」

「まだ、ってなに?ねえこれから話す予定でもあったの?」

無言で顔を逸らされた。

僕だって男だし、カッコつけたかったんだもの…

てか、なんで覚えてるんだよ。

物事を頼むときは目線を一番低くするために土下座をした。

「この事は、誰にも話さないでください」

「えぇ〜、感動的な馴れ初めだと思うんだけどなあ」

「そこをなんとか…」

「大丈夫、言わないから」

そう…結婚式まではね。

「噂をどーすっかな」

「今日栄治の家で相談しようよ」

いきなり呼び捨てですかい、さいですか。

「そうだな、まあ京はうちに住んでるし…

春次第だからなぁ、いいぞ」

「ありがと、じゃあ放課後ねー」

「じゃ」

相談ねぇ…噂を流した奴なんて無責任で、罪悪感も感じてないからな。

根源から潰すしかないのかなぁ…

暴力的な解決はなるべくしたくないからなぁ…

「栄治、なんか悩んでるみたいだな」

「ああ、よくわかったな」

「悩んでる時の顔凄いからな?眉間にシワ寄せて、怖いぞ?」

「マジか…、自覚なかったわ」


考えごとにふけてしまい授業の内容が全く頭に入ってこなかった。

「もう放課後か…時間無駄にした気分だ」

「京、帰ろうか」

「はい」

嫉妬の目線ももう慣れたものだ。

お前らそんな視線向けてる暇あるんだったらアプローチしに行けよ…

「うちに春が来て、噂をどう断つか相談することになった、参加してくれるか?」

「はい、私にも関係があることですしね」


「ただいま」

「ただいま」

「「おかえり」」

母さんと燐が返してくる。

始めの頃は燐は京に対して話しかけたりする事がなかったのだが今は、日常的な挨拶ならかわすのでまだマシになった方だ。

「母さん、これから春が来るから」

「あら、そうなの?ご飯は食べていくのかしら」

気にするところってそこ?違うよね?年頃の男子の部屋に女子が入るんだよ?

まあ、京と一緒の部屋で寝てるから変なことはしないけどさ…


空きの部屋があるにも関わらず俺の部屋で寝ている。なんなら俺のベットを取られているので俺は布団を引いて現在寝ている。

「あぁ…、いつになったら俺の寝床が帰ってくるんだ・・・」

ついボヤいてしまった。すると、

「ベットで寝たいんだったら一緒に寝る?私は気にしないけど?」

「お前が気にしなくても俺が気にするの。ましてや空いてる部屋があるんだからそっちに移ればいいでしょうが」

「それは嫌だ…」

「なんでだよ」

「なんでも」

なんでもって、理由になってないやん。

これは言い合いが続く流れなので引き下がった。


ピンポーン、インターホンが鳴った。

「なんか飲む?」

「お茶ちょうだい」

「あいよ。京もお茶でいいか?」

「いいですよ」

俺は冷蔵庫まで取りに行く途中階段の前に仁王立ちした燐がいた。

「燐?そこ通りたいから退いてくれないか?」

「ちょっと話があるから部屋に来て…」

あー、これはガチギレですわ…

ああ、神さまどうか生きて帰れますように…

俺は祈りを捧げ燐の部屋へ連行された。

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