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先生の声が暗くなった。こんな事なら名前を聞いておけばよかったと後悔している事だろう。
「当時私は中学二年生です。彼女が先輩か後輩かはわかりませんが、その後校舎をいくら探してもいませんでした。私もあまり探す時間がとれなかったというのもありますが」
「探せなかったって、忙しかったとか?」
「忙しいというか、ちゃんとした友達ができるようになったんです。だからついそちらと遊ぶ事を優先してしまって」
「……それならその美少女も喜んでいるだろうな」
先生が優しさを知って友達付き合いがうまくいったなら、美少女はそれでいいと思うはずだ。お礼して欲しいだなんて思っていなかっただろう。
ただ、リーチ君をはじめ私達は諦めてはいない。
「俺達もその美少女を探そうぜ。人手があればなんとかなるだろ」
「うん。志水先生が先生になるきっかけの人だもん。僕達だってお礼を言いたいよ」
よくしてくれる先生のため、リーチ君とたすく君は手伝うと申し出た。もちろん私もだ。
けれどザクロ君だけはお面の顔がうつむいている。
「……その美少女、幽霊だったりしない?」
そして一つの可能性を口にした。
美少女が幽霊。確かに感動系の幽霊話にはよくあるものだ。助けてくれた人がいて、いくら探してもいない。そして当時亡くなっていた事を後で知る話。
ザクロ君は感動系怪談でも怖いらしい。
「幽霊ではないと思うぞ。先生だって動画を見たんだし」
「でもたまに写れる幽霊もいるよ……」
「そりゃあ器用な幽霊だ。あ、その動画だけどさ」
心霊写真なんてものもある。心霊動画もあるだろう。けどリーチ君はその話題である事を思い出した。
「先生、その動画ってのは一回見ただけ?手元にはない?」
「えぇ、彼女の携帯だったので」
「じゃあその動画って自撮り?視点は変わった?」
「あ、Sが蹴られてからは彼女と撮影者が逃げるため視点が変わって……」
「そう、つまり第三者が撮影してたんだ」
ずばりリーチ君が盲点に気付いた。
例の動画はきっと盗み撮りだ。そうでなければSがひっかかるはずがない。
動画が映していたのは告白場面のSと美少女だとして、被写体とカメラには距離が必要。
そして動画の視点が固定されていたら、それは美少女の自撮りだ。机の上にでも携帯のカメラを置いて録画をした。
視点が動くのなら誰かが撮っているという事だ。
考えて見れば、危なっかしい色仕掛けを一人でやるよりは、誰かに隠れてもらっていざという時に助けてもらう方が安全だ。
だからあの場には第三者がいる。
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